新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時、日本は欧米などと比較して人口当たりの感染率・死亡率が低かったことが報告されている1,2)。この要因としては、手洗いやマスクなどの感染予防策が奏効した、日本の高い衛生・医療水準によるものなどの要因が考えられているが、アジア人に多い遺伝子型も一因となっている可能性があるとの報告がなされた。佐賀大学医学部 社会医学講座の高島 賢氏らによって国内で行われた本研究の結果は、Environmental Health and Preventive Medicine誌に2024年3月5日掲載された。
日本人をはじめとした東アジア人には、アルコールを分解するアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の活性が弱く、飲酒時に顔が赤くなる特性を持つ人(rs671変異体)が多い。研究者らは、遺伝子型と新型コロナウイルス感染の防御効果の関連を検証するため、rs671変異体の代替マーカーとして飲酒後の皮膚紅潮現象を用い、後ろ向きに解析した。調査はWebツールを使って2023年8月7~27日に行われ、参加者は感染歴、居住地、喫煙・飲酒歴、既往症などの質問に回答した。
主な結果は以下のとおり。
・計807例(女性367例、男性440例)から有効回答を得た。362例が非紅潮群、445例が紅潮群だった。
・2019年12月~23年5月の42ヵ月間の観察期間全体で、非紅潮群は40.6%、紅潮群は35.7%がCOVID-19に感染した。年齢、性別、居住地等で調整後、初感染までの時間は紅潮群のほうが遅い傾向があった(p=0.057)。
・COVID-19による入院例は、非紅潮群は2.5%、紅潮群は0.5%であった。COVID-19感染および関連した入院リスクは、紅潮群で低かった(p=0.03および<0.01)。
・日本人の多くがCOVID-19ワクチンの2回接種を終える前である2021年8月31日までの21ヵ月間では、紅潮群の非紅潮群に対するCOVID-19感染のハザード比は0.21(95%信頼区間:0.10~0.46)と推定された。
研究者らは、「本研究は、飲酒後の皮膚紅潮現象とCOVID-19の感染および入院のリスク低下との関連を示唆しており、rs671変異体が防御因子であることを示唆している。本研究は感染制御に貴重な情報を提供するとともに、東アジア人特有の体質の多様性を理解する一助となる」としている。
(ケアネット 杉崎 真名)