観察研究では、食事による塩分摂取と認知症の発症リスクに潜在的な関連性があることが示唆されている。しかし、これらの研究では、逆因果関係や残留交絡因子の課題が発生しやすいことに注意を払う必要がある。中国・山西医科大学のKe Shi氏らは、塩分摂取と認知症リスクとの因果関係を調査するため、2サンプルメンデルランダム化(MR)研究を実施した。Genes & Nutrition誌2024年3月15日号の報告。
食事による塩分摂取と認知症リスクとの因果関係を調査するため、MR研究にサマリー統計を組み込んだ。塩分摂取と全体的な認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症など、さまざまなタイプの認知症リスクとの因果関係を推定した。主要なMR分析として、逆分散加重法を用いた。感度分析には、MR-PRESSO法、Leave-one-out法を採用した。多面性および異質性の検証には、MR-Egger intercept、コクランQ検定をそれぞれ用いた。
主な結果は以下のとおり。
・欧州人を祖先に持つ人では、遺伝的に予測されたより高い塩分摂取量と全体的な認知症リスク増加についての関連性が示唆された(オッズ比:1.542、95%信頼区間:1.095~2.169、p=0.013)
・食事による塩分摂取量と全体的な認知症リスクとの因果関係は、統計手法の選択に関してロバストであり、広範の感度分析を通じて検証された。
・明らかな不均一性や多面発現性は認められなかった。
・食事による塩分摂取が、各認知症サブタイプのリスクに及ぼす因果関係を検出することはできなかった。
著者らは、「食事による塩分摂取量と認知症発症との有意な関連性が示唆された。この発見は、認知症予防に対する減塩の重要性を支持するものである」としている。
(鷹野 敦夫)