HER2+転移乳がん、T-DXd後のtucatinibレジメンの有用性は?

提供元:ケアネット

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公開日:2024/04/16

 

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者(活動性脳転移例を含む)の後治療において、経口チロシンキナーゼ阻害薬tucatinibとトラスツズマブおよびカペシタビンの併用(TTC療法)が、臨床的に有意義な転帰と関連していたことを、フランス・Institut de Cancerologie de l'OuestのJean-Sebastien Frenel氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年4月1日号掲載の報告。

 研究グループは、T-DXdの治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者におけるTTC療法後の転帰を調査するためにコホート研究を実施した。対象は、2020年8月1日~2022年12月31日にフランスのがんセンター12施設でT-DXdによる治療を受けた転移乳がん患者全例であった。tucatinib(1日2回300mgを経口投与)とトラスツズマブ(21日ごとに6mg/kgを静脈内投与)およびカペシタビン(21日サイクルの1~14日目に1日2回1,000mg/m2を経口投与)を併用した。主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく無増悪生存期間(PFS)、次治療までの期間(TTNT)、全奏効率(ORR)、全生存期間(OS)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・合計101例の患者が組み入れられた。年齢中央値は56歳(範囲:31~85)、65歳未満が79例(78.2%)、脳転移があったのは39例(38.6%)でそのうち活動性脳転移は16例であった。
・前治療ライン数の中央値は4(範囲:2~15)で、T-DXdの前治療歴ありは100%、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の前治療歴ありは93.1%、トラスツズマブおよび/またはペルツズマブの前治療歴ありは81.2%であった。
・追跡期間中央値11.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.5~13.4)で、病勢進行により75.2%がTTC療法を中止し、有害事象により24.8%が中止した。
・PFS中央値は4.7ヵ月(95%CI:3.9~5.6)、TTNT中央値は5.2ヵ月(4.5~7.0)、OS中央値は13.4ヵ月(11.1~未到達)であった。
・ORRは32.6%、病勢コントロール率は64.0%であった。
・T-DXd治療の直後にTTC療法を受けた患者のPFS中央値は5.0ヵ月(95%CI:4.2~6.0)、TTNT中央値は5.5ヵ月(4.8~7.2)、OS中央値は13.4ヵ月(11.9~未到達)であった。
・活動性脳転移のある16例のPFS中央値は4.7ヵ月(95%CI:3.0~7.3)、TTNT中央値は5.6ヵ月(4.4~未到達)、OS中央値は12.4ヵ月(8.3~未到達)であった。

 これらの結果より、研究グループは「T-DXd治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者において、TTC療法は臨床的に意義のある転帰と関連していた。急速に変化する治療環境において、最適な薬剤選択を検討するには前向き試験のデータが必要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)