幻聴を伴う境界性パーソナリティ障害(BPD)は、統合失調症などの原発性精神疾患と誤診されることがある。正確な診断ができないことは、効果的な心理療法を実行するうえで課題となる可能性がある。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのShih-Ting Tseng氏らは、統合失調症と比較したBPDにおける幻聴の現象学的特徴を特定し、BPD患者の幻聴をターゲットとした心理社会的介入を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。Clinical Psychology & Psychotherapy誌2024年1・2月号の報告。
BPDと統合失調症における幻聴の現象学的類似点および相違点に関するエビデンスをシステマティックにレビューした。また、BPDにおける幻聴に対する心理学的介入の特定も行った。
主な結果は以下のとおり。
・システマティックレビューには、18件の研究を含めた。
・BPD患者は、統合失調症と比較し、より持続的かつ反復的な幻聴が認められ、音声関連の障害や全能性評価が有意に増加し、幻聴の発症年齢がより若年であることが示唆された。
・BPD患者は、抑うつや不安症状がより重度であり、小児期トラウマの発現が多く、否定的な自己スキーマが多かった。
・認知行動療法の対処方略増強法(CBT-CSE)は、BPDにおける幻聴の軽減に有用である可能性があるが、その有効性を判断するにはさらなる研究が求められる。
著者らは、「幻聴を伴うBPD患者を正確に診断するためには、DSM-V基準を拡大する必要性があると考えられる。これにより、診断の実践強化やタイムリーな治療アクセスが容易となる可能性がある。また、BPDにおける幻聴をターゲットとした心理的介入の開発が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)