化学療法の前治療歴のある手術不能または転移を有するHR陽性(+)/HER2陰性(-)の乳がん患者を対象として、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)と医師選択化学療法の有効性と安全性を比較した第III相TROPION-Breast01試験の安全性解析の結果、Dato-DXd群ではGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現は半数以下で、投与中断/減量に至る割合が少なく、とくに注目すべきTRAE(AESI)として規定されていた口内炎/口腔粘膜炎、眼表面障害、薬剤関連間質性肺疾患(ILD)はいずれも低Gradeであったことを、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのKomal Jhaveri氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。
これまでの本試験の解析において、Dato-DXd(6mg/kgを3週ごと:365例)は、医師選択化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン:367例)よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、かつ忍容性も高かったことが報告されている。今回の発表では、副次評価項目である安全性に関する結果が詳細に報告された。なお、毒性管理ガイドラインでは、洗口液の使用(入手可能であればステロイド洗口液の使用が強く推奨)や口腔内の冷却、目薬の使用やコンタクトレンズの使用中止が推奨されていた。
主な結果は以下のとおり。
・データカットオフ(2023年7月17日)時点で、治療期間中央値は、Dato-DXd群6.7ヵ月、化学療法群4.1ヵ月であった。
・全GradeのTRAEの発現率は、Dato-DXd群の93.6%に対して化学療法群は86.3%でDato-DXd群が高かったが、Grade3以上のTRAEはDato-DXd群20.8%、化学療法群44.7%でDato-DXd群が半数以下であった。減量/中断に至ったTRAEの割合もDato-DXd群のほうが低かった。
・AESIに規定されていた口内炎/口腔粘膜炎は、Dato-DXd群の55.6%に発現し、Grade1が25.3%、Grade2が23.3%、Grade3が6.9%であった。減量に至ったのは13.3%、中断に至ったのは1.4%、中止に至ったのは0.3%であった。発現までの期間の中央値は22日、消失までの期間の中央値は36.5日であった。
・眼表面障害は、Dato-DXd群の40.0%に発現し、Grade1が31.9%、Grade2が7.2%、Grade3が0.8%であった。減量および/または中断に至ったのは3.3%、中止に至ったのは0.3%であった。発現までの期間の中央値は65日、消失までの期間の中央値は67日であった。眼表面障害は主に3サイクルごとの眼科検診によって評価され、50%以上がドライアイであった。
・薬剤関連ILDは、Dato-DXd群の3.3%に発現し、Grade1が1.4%、Grade2が1.1%、Grade3以上が0.8%であった。減量に至ったのは0.3%、中断に至ったのは0.8%、中止に至ったのは1.4%であった。発現までの期間の中央値は84.5日、消失までの期間の中央値は28日であった。
・臨床的関心の高いTRAEに規定されていた好中球減少症はDato-DXd群10.8%(Grade3以上1.1%)および化学療法群42.5%(30.8%)、貧血は11.1%(1.1%)および19.7%(2.0%)、白血球減少症は7.2%(0.6%)および17.1%(6.8%)に発現した。
・その他のTRAEとして、悪心はDato-DXd群51.1%(Grade3以上1.4%)および化学療法群23.6%(0.6%)、下痢は7.5%(0%)および12.3%(1.1%)、脱毛症は36.4%(Grade1が21.4%、Grade2が15.0%)および20.5%(Grade1、2ともに10.3%)、末梢神経障害は3.6%(Grade3が0.3%)および13.7%(0.6%)に発現した。
Jhaveri氏は「これらの結果は、化学療法の前治療歴のある手術不能または転移を有するHR+/HER2-の乳がん患者に対して、Dato-DXdが新たな治療選択肢となる可能性をさらに裏付けるものである」とまとめた。
(ケアネット 森 幸子)