一次乳房再建における有害事象のリスク因子/日本乳癌学会

提供元:ケアネット

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公開日:2024/07/29

 

 2013年に乳房インプラントが保険収載されて以降乳房再建は増加傾向にあり、2020年には遺伝性乳がん卵巣がん症候群の予防的切除も保険収載された。一方で、乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の発生が報告され、再建後有害事象のリスク因子についても多数の報告があるが、結果は一致していない。日本乳癌学会班研究(枝園班)では、一次乳房再建施行患者における有害事象のリスク因子について多施設共同の後ろ向き解析を実施し、聖マリアンナ医科大学の志茂 彩華氏が結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 本研究の対象は、2008年1月~2016年12月に国内12施設で一次乳房再建が施行された、診断時に20歳以上80歳未満の乳がん症例4,720例。Stage IVの患者は除外された。

 主な結果は以下のとおり。

・患者背景は、年齢中央値46(20~83)歳、65歳以上は4.1%であった。BMIは18.5~25(普通)が74.3%を占めたが、25以上の肥満患者も10%以上含まれた。喫煙歴なしが77.8%、両側性なしが84.0%、乳房手術はtotal mastectomyが35.9%、skin-sparing mastectomy(SSM)が33.8%、nipple-sparing mastectomy(NSM)が30.3%であった。再建方法は、一次一期再建としてインプラントが3.5%、自家組織が11.1%、一次二期再建が85.4%であった。腋窩手術はセンチネルが81.7%、郭清が17.2%、なしが1.1%であった。
・組織型は浸潤性乳管がんが64.5%を占め、非浸潤性乳管がんが27.1%、浸潤性小葉がんが4.2%であった。pN0が79.3%を占めた一方、pN≧4の症例も4.5%含まれた。術前/術後化学療法なしがそれぞれ90.0%/77.4%で、術後ホルモン療法は62.3%が受けていた。PMRTの施行を受けていたのは7.6%であった。
・有害事象が報告されたのは840例(17.8%)で、最も多かったのは乳頭乳輪(NAC)血流不全(NSM症例のうち14.9%)で、皮弁壊死が4.8%、感染が3.8%と続き、感染についてはGrade3が2.8%であった。
・有害事象の転帰については、インプラント症例で感染が発生した場合75.9%で抜去もしくは入れ替えが行われていた。皮弁壊死の場合はインプラント症例の11.9%で抜去もしくは入れ替え、自家再建症例の23.1%で自家再建組織の一部もしくは全切除が行われていた。
・有害事象のリスク因子について、65歳以上、BMI≧25、喫煙歴ありの症例については、多変量解析および単変量解析のいずれにおいても有意差が認められた。
・連続変数によるロジスティック解析においても、年齢およびBMIが高くなるほど有害事象が増加することが明らかになった。
・手術の方法と有害事象の関係について、total mastectomyと比較するとSSM、NSMはともに多変量解析および単変量解析のいずれにおいても有意にリスクが高くなり、とくにNSMで最も多いことが確認された。再建方法については、一次二期再建と比較するとインプラント、自家再建ともに一次一期再建で有意にリスクが高かった。両側性の有無や腋窩手術に関して因果関係は認められなかった。
・病理結果と有害事象の関係について、単変量解析の結果、非浸潤性乳管がんと比較すると浸潤性がんでリスクが高かった。リンパ節転移の有無に関しては、pN≧4でリスクが高かった。
・治療法と有害事象の関係について、単変量解析の結果、術後ホルモン療法およびPMRTありの場合にリスクが高かった。術前/術後化学療法の有無に関して因果関係は認められなかった。

 志茂氏は、「重大な有害事象が起こると再手術が必要になる可能性があり、整容性の低下、患者の負担が懸念される」とし、「リスク因子を有する患者に対しては、術前の管理や術後の経過について十分に注意する必要がある」とまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)