乳房切除術後に乳房再建術を受けた乳がん患者に対して、1回当たりの線量を増やして治療回数を減らす短期照射法は、乳がんの再発や治療に伴う副作用に関しては標準的な放射線治療を受けた場合と同等だが、生活への影響や経済的負担は軽減することを示した研究結果が報告された。米ダナファーバー・ブリガムがんセンターのRinaa Punglia氏らによるこの研究結果は、米国放射線腫瘍学会年次総会(ASTRO 2023、10月1〜4日、米サンディエゴ)で発表された。
Punglia氏の説明によると、女性の乳がん患者のおよそ40%が乳房切除術を受け、そのうちの62%が乳房再建術を受ける。乳房切除術を受けた患者のおよそ3分の1には、通常は5週間の放射線治療が必要になる。近年、乳房切除術と同時にインプラントや自家組織による乳房再建術を行う患者が増加傾向にあるが、乳房再建術後の患者に放射線治療を行うと、感染症や乳房周囲の瘢痕組織の形成などの合併症のリスクが増加することが知られている。
同がんセンターの放射線腫瘍医であるJulia Wong氏は、「放射線は、乳房切除術と乳房再建術を受けた患者の整容性に望ましくない変化をもたらす可能性があることが分かっている。今回の試験では、治療の有効性を犠牲にすることなく、生活の質(QOL)と整容性を向上させる方法を探そうとした」と話す。
Punglia氏らは今回、乳房切除術後にインプラントまたは自家組織を用いた乳房再建術を受けたステージ0〜IIIの乳がん患者400人を対象に、標準的な放射線治療または短期照射法を実施し、患者のQOLや転帰を比較した。患者のうちの201人は標準的な放射線治療(5週間、25回にわたって計50Gyの放射線を照射)を受ける群(標準治療群)に、199人は短期照射法での治療(3週間、16回にわたって計43Gyの放射線を照射)を受ける群(短期照射法群)に割り付けられた。対象者は、試験開始時と治療から6、12、18カ月後に身体的ウェルビーイングやQOLに関する評価も受けた。
追跡期間中央値40カ月の間に乳がんの再発と放射線治療に関連する副作用が生じた患者の割合は、短期照射法群と標準治療群で同等だった。患者の報告による身体的ウェルビーイングについても両群間で同等であり、治療期間を短縮してもQOLが大きく改善するわけではないことがうかがわれた。ただし、対象を45歳未満に絞ると、短期照射法群では身体的ウェルビーイングにわずかながら統計学的に有意なベネフィットが認められた。また、短期照射法群では標準治療群に比べて、無給休暇を取った時間が短く(73.7時間対125.8時間)、経済的負担も小さかった。
Punglia氏は、「われわれの試験から、乳房切除術後に乳房再建術を受けた乳がん患者に対しては、有効性を損なったり副作用を増加させたりすることなく、安全に短期照射を行えることが示唆された。放射線治療の期間を3週間に短縮することは、患者のQOLの大きな改善につながる」とダナファーバーがん研究所のニュースリリースで述べている。
研究グループは、効果を損なうことなくがん治療の負担を軽減するために、さらなる放射線治療の短縮コースや新しい形態の放射線治療を探求する予定であると話している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[2023年10月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら