飲酒による死亡率上昇、ワイン好きや食事中に飲む人は低減か

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/05

 

 高齢者において、アルコール摂取パターンと健康関連や社会経済リスクが、死亡率にどのような影響を与えるかについて、英国の60歳以上を対象とした大規模コホート研究が実施された。その結果、少量のアルコール摂取であっても死亡率が高くなることが示された。また、ワインを好み、食事中のみ飲酒する習慣がある場合、死亡率の増加が低減される可能性があることも示唆された。スペイン・マドリード自治大学のRosario Ortola氏らによる報告。JAMA Network Open誌2024年8月12日号に掲載。

 本研究では、UK Biobankに登録された60歳以上を対象に、2023年9月~2024年5月までのデータを解析した。参加者の飲酒パターンは、1日当たりの平均アルコール摂取量(g)により、次のように分類した:たまに飲酒する群(≦2.86g/日)、低飲酒量群(男性:2.87~20.00g/日、女性:2.87~10.00g/日)、中飲酒量群(男性:20.01~40.00g/日、女性:10.01~20.00g/日)、高飲酒量群(男性:>40.00g/日、女性:>20.00g/日)1)。また、食事中のみ飲酒する人、食事外でも飲酒する人に分類された。酒の種類について、ワインの嗜好の有無でも分類された。解析では追跡開始後2年間の死亡を除外し、飲酒パターンや嗜好を含む潜在的交絡因子を調整した。平均アルコール摂取状況、食事中の飲酒、ワイン嗜好と、全死因死亡率、がん死亡率、心血管疾患(CVD)死亡率との関連について、Cox回帰分析によりハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・参加者は13万5,103例、年齢中央値64.0歳(IQR 62.0~67.0)、女性6万7,693例(50.1%)であった。追跡期間の中央値12.4年(範囲 2.0~14.8)において、死亡者数は1万5,833例であり、うち、がんによる死亡7,871例、CVDによる死亡3,215例であった。
・飲酒パターンと死亡率について、たまに飲酒する群と比較した結果、低~高飲酒量のすべての群で死亡率の上昇と関連していた。
 【高飲酒量群】全死因死亡HR:1.33(95%CI:1.24~1.42)、がん死亡HR:1.39(1.26~1.53)、CVD死亡HR:1.21(1.04~1.41)
 【中飲酒量群】全死因死亡HR:1.10(95%CI:1.03~1.18)、がん死亡HR:1.15(1.05~1.27)
 【低飲酒量群】がん死亡HR:1.11(95%CI:1.01~1.22)
・低~高飲酒量のすべての群で、健康関連リスクまたは社会経済的リスクのある人は、リスクのない人よりも全死因死亡率が高かった。
・食事中のみ飲酒する人は、健康関連リスクまたは社会経済的リスクのある人において、食事外でも飲酒する人と比較して、全死因死亡率およびがん死亡率の低下と関連していた。
 【健康関連リスク者】全死因死亡HR:0.93(95%CI:0.89~0.97)、がん死亡HR:0.92(0.86~0.99)
 【社会経済的リスク者】全死因死亡HR:0.83(95%CI:0.78~0.89)、がん死亡HR:0.85(0.78~0.94)、CVD死亡HR:0.86(0.75~1.00)
・ワインの嗜好がある人は、健康関連リスクまたは社会経済的リスクのある人において、全死因死亡率の低下と関連していた。
 【健康関連リスク者】全死因死亡HR:0.92(95%CI:0.87~0.97)
 【社会経済的リスク者】全死因死亡HR:0.84(95%CI:0.78~0.90)、がん死亡HR:0.89(0.80~0.99)
・ワイン嗜好と食事中の飲酒パターンを持つ人において、高飲酒量群では全死因死亡率、がん死亡率、CVD死亡率、中飲酒量群では全死因死亡率とがん死亡率、低飲酒量群ではがん死亡率について、超過リスクが低減した。

 著者らは本結果について、社会経済的または健康関連のリスクのある人では、低飲酒量であっても、とくにがんによる死亡と有害な関連性が認められた一方で、ワインを好む人や食事中のみの飲酒により、アルコール関連超過死亡率の減少がみられ、この要因を解明するためのさらなる調査が必要だと指摘している。

(ケアネット 古賀 公子)

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1)純アルコール量(g)=摂取量(mL)×アルコール濃度(度数または%/100)×比重
例)ビール350mL(レギュラー缶):14g、ワイン120mL(グラス1杯):12g