EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)治療では、オシメルチニブが広く用いられているが、RECISTに基づく病勢進行(RECIST PD)後の臨床経過や治療実態は明らかになっていない。そこで、1次治療としてオシメルチニブを用いたEGFR遺伝子変異陽性患者を前向きに追跡する多施設共同観察研究(REIWA)が実施された。本研究において、オシメルチニブは実臨床においても既報の臨床試験と同様の有効性がみられたが、臨床的に安定した患者ではRECIST PD後にオシメルチニブを継続した場合、中止した場合と比べてRECIST PD後の全生存期間(OS)が短かった。本研究結果は、渡邊 景明氏(都立駒込病院)らによって、JTO Clinical and Research Reports誌2024年8月23日号で報告された。
本研究は、2018年9月~2020年8月の期間に1次治療として、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療を受けたEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者660例のうち、オシメルチニブによる治療を受けた583例を対象とした。対象患者をRECIST PD時の病勢進行の部位(中枢神経のみ、オリゴ転移、複数臓器)、症状・全身状態(無症状、有症状かつ臨床的増悪なし、臨床的増悪あり)で分類し、臨床経過および治療実態を検討した。また、RECIST PD後にオシメルチニブを継続した患者(継続群)と中止した患者(中止群)を比較した。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者583例におけるOS中央値は41.0ヵ月、無増悪生存期間(PFS)中央値は20.0ヵ月であった。
・EGFR遺伝子変異別にみたOS中央値は、exon19欠失変異群が44.2ヵ月、exon21 L858R変異群が36.1ヵ月であり、exon19欠失変異群が有意に長かった(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.48~0.81、p=0.0004)。PFS中央値は、それぞれ23.5ヵ月、16.9ヵ月であり、exon19欠失変異群が有意に長かった(同:0.68、0.56~0.84、p=0.0002)。
・RECICT PDは344例に認められ、部位別にみると中枢神経のみが37例(10.8%)、オリゴ転移が156例(45.4%)、複数臓器が151例(43.9%)であった。症状・全身状態別にみると無症状が195例(56.7%)、有症状かつ臨床的増悪なしが73例(21.2%)、臨床的増悪ありが76例(22.1%)であった。
・RECIST PD後もオシメルチニブを継続したのは163例(47.4%)であった。
・臨床的増悪のない集団(247例)を対象として、RECIST PD後のオシメルチニブ継続の有無別にみた場合のRECIST PD後のOS中央値は、継続群が13.2ヵ月、中止群が24.0ヵ月であり、継続群は中止群と比べて有意にRECIST PD後のOSが短かった(HR:2.01、95%CI:1.38〜2.91、p=0.0002)。
・2次治療として化学療法による治療を実施した患者は、継続群が63例(38.7%)、中止群が114例(63.3%)であった。
(ケアネット 佐藤 亮)