抗精神病薬は、最も汎用されている薬剤の1つであり、認知機能低下を引き起こす可能性が示唆されている。しかし、認知症リスクに対する抗精神病薬の影響に関する研究は、一貫性がなく、十分とは言えない。中国・青島大学のLi-Yun Ma氏らは、抗精神病薬使用と認知症リスクとの関係を調査するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年3月15日号の報告。
英国バイオバンク参加者41万5,100例のプロスペクティブコホート研究のデータを用いて、分析を行った。抗精神病薬およびさまざまなクラスの使用が認知症リスクに及ぼす影響を評価するため、多変量Cox比例ハザードモデルおよび経口抗精神病薬用量反応効果分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ調査後(平均:8.64年)、すべての原因による認知症を発症した参加者は5,235例(1.3%)であった。
・主な内訳は、アルツハイマー病2,313例(0.6%)、血管性認知症1,213例(0.3%)であった。
・いずれかの抗精神病薬使用により、すべての原因による認知症および血管性認知症のリスクは増加したが、アルツハイマー病リスクの増加は認められなかった。
【すべての原因による認知症】ハザード比(HR):1.33、95%信頼関係(CI):1.17~1.51、p<0.001
【血管性認知症】HR:1.90、95%CI:1.51~2.40、p<0.001
【アルツハイマー病】HR:1.22、95%CI:1.00~1.48、p=0.051
・経口抗精神病薬とすべての原因による認知症および血管性認知症のリスクとの累積用量反応関係が認められた(p for trend:p<0.05)。
・本研究は、観察研究であり因果関係を示すものではない。
・英国バイオバンクのデータは認知症症例数が比較的少なかったことから、抗精神病薬使用は、推定値よりも高い可能性がある。
著者らは「抗精神病薬使用により認知症発症リスクの増加が認められた。経口抗精神病薬と認知症リスクとの間には、用量反応関係が認められており、抗精神病薬の減量に対する医師および患者の意識を高めていく必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)