双極症に対するリチウム使用、23年間の変遷

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/17

 

 薬剤の疫学データによると、双極症に対するリチウムの使用は、徐々に減少しており、他の適応症への注目も低下している。ドイツ・ミュンヘン大学のWaldemar Greil氏らは、1994~2017年のリチウム処方の変化を調査した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2024年8月22日号の報告。

 ドイツ、オーストリア、スイスの精神科病院を含む精神医学における薬物安全性プログラムAMSPのデータを用いて、1994~2017年のリチウム処方を分析した。さまざまな疾患に対するリチウムの使用は、2001年以前と以降および3つの期間(T1:1994~2001年、T2:2002~09年、T3:2010~17年)により比較を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・対象は、成人入院患者15万8,384例(女性の割合:54%、平均年齢:47.4±17.0歳)。
・リチウム処方は、統合失調症スペクトラム患者で2001年以前の7.7%から2001年以降の5.1%へ、情動障害患者では16.8%から9.6%へと、統計学的に有意な減少が確認された。
・各疾患サブグループにおいてもリチウム処方の減少が認められた。
【統合失調感情障害(ICD-10:F25)】27.8%→17.4%(p<0.001)
【双極症(ICD-10:F31)】41.3%→31.0%(p<0.001)
【うつ病エピソード(ICD-10:F32)】8.1%→3.4%(p<0.001)
【再発性うつ病(ICD-10:F33)】17.9%→7.5%(p<0.001)
【情緒不安定、境界性パーソナリティ障害】6.3%→3.9%(p=0.01)
・T1、T2、T3における比較は次のとおりであり、双極症に対するリチウム処方は、2002年以降、あまり減少していなかった。
【統合失調感情障害】26.7%→18.2%→16.2%
【双極症】40.8%→31.7%→30.0%
【うつ病エピソード】7.7%→4.2%→2.7%
【再発性うつ病】17.2%→8.6%→6.6%
・リチウムと併用された主な向精神薬は、クエチアピン(21.1%)、ロラゼパム(20.6%)、オランザピン(15.2%)であった。

 著者らは「入院患者に対するリチウム処方は、双極症だけでなく、さまざまな疾患において減少していることが確認された」としている。

(鷹野 敦夫)