限局型小細胞肺がんへのデュルバルマブ地固め、OS・PFSサブグループ解析(ADRIATIC)/ESMO2024

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/18

 

 限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の第1回中間解析において、同時化学放射線療法(cCRT)後のデュルバルマブ地固め療法が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告されている1)。本試験では、予防的頭蓋照射(PCI)の有無は問わず、cCRT時の放射線照射の回数も1日1回と1日2回が許容されていた。そこで、それらの違いによるOS・PFSへの影響を検討するサブグループ解析(post hoc解析)が実施された。本結果は、オランダ・アムステルダム大学のSuresh Senan氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表された。

・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
・対象:I~III期(I/II期は外科手術不能の患者)でPS0/1のLD-SCLC患者のうち、cCRT後に病勢進行が認められなかった患者730例(PCIの有無は問わない)
・試験群1(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(1,500mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 264例
・試験群2(デュルバルマブ+トレメリムマブ群):デュルバルマブ(同上)+トレメリムマブ(75mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 200例
・対照群(プラセボ群):プラセボ 266例
・評価項目:
[主要評価項目]OS、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS(いずれもデュルバルマブ群vs.プラセボ群)
[副次評価項目]OS、RECIST v1.1に基づくBICRによるPFS(いずれもデュルバルマブ+トレメリムマブ群vs.プラセボ群)、安全性など

 今回は、デュルバルマブ群とプラセボ群のOS・PFSのサブグループ解析の結果が報告された。報告された主な結果は以下のとおり。

・PCIを受けたのはデュルバルマブ群54%、プラセボ群54%であった。cCRT時のプラチナ製剤は、シスプラチンがそれぞれ66%、67%、カルボプラチンがそれぞれ34%、33%であった。放射線照射の回数は、1日1回がそれぞれ73.9%、70.3%、1日2回がそれぞれ26.1%、29.7%であった。

・PCIの有無別にみたサブグループ解析において、OSとPFSに関するデュルバルマブ群のベネフィットはいずれのサブグループでも同様であった。各群のOS・PFS中央値(調整ハザード比[aHR]、95%信頼区間[CI])は以下のとおり。
 【OS】
 PCIあり:未到達vs.42.5ヵ月(aHR:0.72、95%CI:0.50~1.03)
 PCIなし:37.3ヵ月vs.24.1ヵ月(aHR:0.73、95%CI:0.52~1.02)
 ITT集団:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.57~0.93)
 【PFS】
 PCIあり:28.2ヵ月vs.13.0ヵ月(aHR:0.72、95%CI:0.52~0.99)
 PCIなし:9.1ヵ月vs.7.4ヵ月(aHR:0.84、95%CI:0.61~1.15)
 ITT集団:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)

・cCRT時のプラチナ製剤別にみたサブグループ解析において、OSとPFSに関するデュルバルマブ群のベネフィットは、シスプラチンを用いた集団で小さい傾向にあったが、用いたプラチナ製剤による有意な交互作用は認められなかった。各群のOS・PFS中央値(aHR、95%CI)は以下のとおり。
 【OS】
 シスプラチン:41.9ヵ月vs.34.3ヵ月(aHR:0.81、95%CI:0.60~1.08)
 カルボプラチン:未到達vs.33.4ヵ月(aHR:0.55、95%CI:0.35~0.87)
 ITT集団:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.57~0.93)
 【PFS】
 シスプラチン:11.4ヵ月vs.9.7ヵ月(aHR:0.89、95%CI:0.67~1.17)
 カルボプラチン:27.9ヵ月vs.9.2ヵ月(aHR:0.60、95%CI:0.40~0.88)
 ITT集団:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)

・放射線照射の回数別にみたサブグループ解析において、OSとPFSに関するデュルバルマブ群のベネフィットはいずれのサブグループでも同様であった。各群のOS・PFS中央値(aHR、95%CI)は以下のとおり。
 【OS】
 1日1回:41.9ヵ月vs.26.1ヵ月(aHR:0.73、95%CI:0.55~0.96)
 1日2回:未到達vs.44.8ヵ月(aHR:0.71、95%CI:0.42~1.18)
 ITT集団:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.57~0.93)
 【PFS】
 1日1回:11.4ヵ月vs.7.8ヵ月(aHR:0.79、95%CI:0.61~1.03)
 1日2回:38.7ヵ月vs.14.3ヵ月(aHR:0.73、95%CI:0.46~1.14)
 ITT集団:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)

・Grade3/4の有害事象の発現率は、PCIありのサブグループがPCIなしのサブグループよりも高く、同様にカルボプラチンを用いたサブグループがシスプラチンを用いたサブグループよりも高かった。デュルバルマブの中止に至った有害事象の発現率は、いずれのサブグループでも同様であった。

 Senan氏は、本結果について「LD-SCLC患者において、cCRT後のデュルバルマブによる地固め療法は新たな標準治療となることを支持するものである」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)