本邦では、StageI/IIA(UICC第8版)以外でPS0~2の限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)の治療は、プラチナ製剤を用いた同時化学放射線療法(cCRT)および初回治療で完全寛解が得られた患者への予防的頭蓋照射(PCI)が、標準治療となっている。新たな治療法として、cCRT後のデュルバルマブ地固め療法が有用である可能性が示された。国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の第1回中間解析において、cCRT後のデュルバルマブ地固め療法が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で、米国・Sarah Cannon Research InstituteのDavid R. Spigel氏が本研究結果を報告した。
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
・対象:I~III期(I/II期は外科手術不能の患者)でPS0/1のLD-SCLC患者のうち、cCRT後に病勢進行が認められなかった患者730例(PCIの有無は問わない)
・試験群1(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(1,500mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 264例
・試験群2(デュルバルマブ+トレメリムマブ群):デュルバルマブ(同上)+トレメリムマブ(75mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 200例
・対照群(プラセボ群):プラセボ 266例
・評価項目:
[主要評価項目]OS、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS(いずれもデュルバルマブ群vs.プラセボ群)
[副次評価項目]OS、RECIST v1.1に基づくBICRによるPFS(いずれもデュルバルマブ+トレメリムマブ群vs.プラセボ群)、安全性など
今回は、デュルバルマブ群とプラセボ群の比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。
・データカットオフ時点(2024年1月15日)において、OSおよびPFSの追跡期間中央値は、それぞれ37.2ヵ月、27.6ヵ月であった。
・放射線照射は、1日1回がデュルバルマブ群73.9%、プラセボ群70.3%、1日2回がそれぞれ26.1%、29.7%であった。
・OS中央値はデュルバルマブ群が55.9ヵ月、プラセボ群が33.4ヵ月であり、デュルバルマブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.93、p=0.0104)。24ヵ月OS率はそれぞれ68.0%、58.5%、36ヵ月OS率はそれぞれ56.5%、47.6%であった。
・BICRによるPFS中央値は、デュルバルマブ群が16.6ヵ月、プラセボ群が9.2ヵ月であり、デュルバルマブ群が有意に改善した(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95、p=0.0161)。18ヵ月PFS率はそれぞれ48.8%、36.1%、24ヵ月PFS率はそれぞれ46.2%、34.2%であった。
・OSとPFSは、いずれも事前に規定されたサブグループ間で一貫してデュルバルマブ群で改善する傾向にあった。
・Grade3/4の有害事象(AE)はデュルバルマブ群24.4%、プラセボ群24.2%に発現した。投与中止に至ったAEはそれぞれ16.4%、10.6%、死亡に至ったAEはそれぞれ2.7%、1.9%に発現した。
・肺臓炎/放射線肺臓炎はデュルバルマブ群38.2%、プラセボ群30.2%(Grade3/4はそれぞれ3.1%、2.6%)に発現した。
Spigel氏は、本結果について「デュルバルマブ地固め療法は、cCRT後に病勢進行が認められないLD-SCLC患者に対する新たな標準治療となるだろう」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)