局所進行直腸がんでは、術前に化学療法や放射線療法を集中的に行って腫瘍縮小を最大限に図り、局所制御と遠隔転移のリスクを低減するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、世界的な標準治療となりつつある。TNT後に臨床学的完全奏効(cCR)が得られた患者では非手術的管理も検討され、その後の局所転移は19~34%程度と報告されている。非手術的管理後の遠隔転移率と、ctDNA解析によるTNT後の奏効率のバイオマーカー探索を目的とした多施設単群第II相NO-CUT試験が行われ、イタリア・Niguarda Cancer CenterのAlessio Amatu氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)のPresidential Symposiumで初回の結果報告をした。
・対象:pMMR/MSSの局所進行直腸がん、PS 0~1
・方法:CAPOX療法4サイクルに続いて5週間の長時間化学放射線療法のTNTを行い、cCRが得られれば非手術的管理、得られなければ手術を行ったうえでフォローアップ。
評価項目:
[主要評価項目]30ヵ月時点で生存し、遠隔転移のない患者の割合(DRFS30)
[副次評価項目]cCR率、非手術的管理群の臓器温存率
主な結果は以下のとおり。
・2018~23年に180例がTNTを受け、164例(91%)がプロトコル通りに治療を完了し、46例(25.5%)がcCRを得て非手術的管理群に割り付けられた。追跡期間中央値は27(SD 3~27)ヵ月だった。
・DRFS30は非手術的管理群97%、手術群74%、全体77%であった。
・非手術的管理群の臓器温存率は85%(39/46例)だった。
・局所再発は、非手術的管理群では15%、手術群では9%で発生した。2024年4月1日時点で、12例の死亡(6.6%)が報告された。内訳は有害事象1例、腫瘍進行9例、その他2例だった。
・TNT後のリキッドバイオプシー解析では、ctDNA陰性例ではcCR率が高く、陽性例では手術の有無にかかわらず遠隔転移のリスクが高かった。手術後のctDNAの状態と無増悪生存期間(PFS)にも相関が見られた。その他のマルチオミクス解析は進行中となっている。
Amatu氏は「NO-CUT試験の主要評価項目は達成され、4人に1人がTNT療法によって非手術的管理のベネフィットを得られた。さらに非手術的管理群のDRFS30は97%、臓器温存率は85%と高い結果だった。今後のマルチオミクス解析によって非手術的管理の患者選択はさらに精緻にできるようになるだろう」とした。
(ケアネット 杉崎 真名)