EGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんのアンメットニーズと新たな治療/J&J

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/12

 

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は、「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の適応で2024年9月に本邦での製造販売承認を取得したアミバンタマブ(商品名:ライブリバント)を、同年11月20日に発売した。これを受け、11月29日にライブリバント発売記者発表会が開催され、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長・呼吸器内科長)が講演を行った。

EGFRエクソン20挿入変異の特徴

 アミバンタマブの対象となる「EGFRエクソン20挿入変異」はEGFR遺伝子変異の中で3番目に多いことが知られており1)、LC-SCRUM-Asiaの報告では、登録者のおよそ1.7%(189/11,397例)に検出されていた2)。また、同報告においては、エクソン19欠失変異やL858R変異と比較して、男性や喫煙者にも検出される割合がやや高かった。

 EGFR遺伝子の変異は、リガンド非依存的なATP結合と細胞増殖シグナル伝達を引き起こすが、エクソン20挿入変異があると、ATP結合部位が狭くなり、ATPと競合拮抗するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の結合が妨げられることが報告されている3,4)。従来のTKIへの感受性は乏しく、アンメット・メディカル・ニーズの高い領域とされている。そこに新たに登場したのが、EGFRとMETを標的とする二重特異性抗体のアミバンタマブである。

2024年版ガイドラインにおけるアミバンタマブの位置付け

 アミバンタマブは、未治療のEGFRエクソン20挿入変異陽性のNSCLC患者を対象とした国際共同非盲検無作為化比較第III相試験「PAPILLON試験」の結果に基づいて承認された。本試験では、アミバンタマブと化学療法の併用群が、化学療法群と比較し、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間の改善を示したことが報告されている5)

 これを受けて、2024年10月に公開された『肺癌診療ガイドライン2024年版』6)では、EGFRエクソン20挿入変異の一次治療に関するCQが新設され、アミバンタマブと化学療法の併用療法の推奨が明記された。

【肺癌診療ガイドライン2024年版 CQ50】
CQ50. エクソン20の挿入変異に対して、一次治療で標的療法が勧められるか?
a. エクソン20の挿入変異にはカルボプラチン+ペメトレキセド+アミバンタマブ併用療法を行うよう強く推奨する。
(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)
b. エクソン20の挿入変異にはEGFR-TKI単剤療法を行わないよう強く推奨する。
(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:C)

【製品概要】
商品名:ライブリバント点滴静注350mg
一般名:アミバンタマブ(遺伝子組換え)
製造販売承認日:2024年9月24日
薬価基準収載日:2024年11月20日
発売日:2024年11月20日
薬価:350mg 7mL 1瓶 160,014円
製造販売元(輸入):ヤンセンファーマ株式会社

■参考文献・参考サイト
1)Arcila ME, et al. Mol Cancer Ther. 2013;12:220-229.
2)Okahisa M, et al. Lung Cancer. 2024;191:107798.
3)Yasuda H, et al. Sci Transl Med. 2013;5:216ra177.
4)Robichaux JP, et al. Nat Med. 2018;24:638-646.
5)Zhou C, et al. N Engl J Med. 2023;389:2039-2051.
6)日本肺癌学会 編. 肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む―2024年版【Web版】