高齢者の術後せん妄予防に最も効果的な薬剤は〜ネットワークメタ解析

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/01/08

 

 高齢患者における術後せん妄の発生率および死亡率は高く、予防戦略の必要性が求められている。さまざまな薬理学的予防戦略が有効であることが報告されているものの、高齢者を対象としたベネフィットや安全性は、依然として明らかになっていない。台湾・Chi Mei Medical CenterのTing-Hui Liu氏らは、高齢者患者における術後せん妄予防に対するさまざまな薬理学的介入の有効性をシステマティックに評価し、ランク付けするため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Psychiatric Research誌2025年1月号の報告。

 2023年8月1日までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PsycINFO、Google Scholarより検索した。対象RCTには、高齢患者における術後せん妄の薬理学的予防効果を調査した研究を含めた。事前に定義した事項に沿ってデータを抽出するため、PRISMAガイドラインを用いた。主要アウトカムは、術後せん妄の発生率とした。副次的アウトカムは、忍容性とし、すべての原因による中止または脱落率、すべての原因による死亡率により評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象RCT44件、対象患者1万1,178例をメタ解析に含めた。
・これらの研究のうち、26件のRCTはプラセボのみとの比較試験であった。
・プラセボと比較し、せん妄の発生率が有意に低かった薬剤は、次のとおり。
【非定型抗精神病薬】オッズ比(OR):0.27、95%信頼区間(CI):0.12〜0.58
【ハロペリドール】OR:0.42、95%CI:0.25〜0.71
【デクスメデトミジン】OR:0.51、95%CI:0.37〜0.71
【メラトニン受容体作動薬】OR:0.57、95%CI:0.33〜0.98
・最も効果的な治療としてランク付けされた薬剤は、非定型抗精神病薬であった。
・忍容性に関しては、プラセボまたは各薬理学的治療群において、脱落率およびすべての原因による死亡率に統計学的な差は認められなかった。

 著者らは「高齢患者における術後せん妄に対する薬理学的介入は、非定型抗精神病薬、デクスメデトミジン、メラトニン受容体作動薬、ハロペリドールが効果的であることが特定された。とくに、非定型抗精神病薬は最も評価が高かった」とし「これらの結果をさらに確認するためにも、RCTの必要性が示唆された」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)