自閉スペクトラム症と統合失調症の鑑別に有用な評価尺度は

提供元:ケアネット

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公開日:2025/01/24

 

 統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)は、別々の疾患として認識されているが、症状の類似性により鑑別診断が困難な場合が少なくない。昭和大学の中村 暖氏らは、統合失調症とASDの症状について類似点と相違点の特定、より有用で客観的な鑑別診断法の確立、統合失調症患者におけるASD特性を明らかにすることを目的に、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年12月18日号の報告。

 対象は統合失調症患者40例(女性:13例、平均年齢:34±11歳)およびASD患者50例(女性:15例、平均年齢:34±8歳)。自閉症診断観察尺度第2版(ADOS-2)およびその他の臨床尺度を用いて評価を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・ADOS-2モジュール4および改訂版では、統合失調症とASDの鑑別は困難であったが、A7、A10、B1、B6、B8、B9を組み合わせた予測モデルは、両疾患を鑑別するうえで、優れた精度を示した。
・ADOS-2は統合失調症の偽陽性率が高く、統合失調症患者においてADOS-2すべてのドメインおよび合計スコアと陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の陰性症状スコアとの間に正の相関が認められた。
・ADOS-2アルゴリズムにおいて、自閉スペクトラム症のカットオフ値が陽性の患者は、陰性の患者よりも、PANSS陰性症状スコアが有意に高かった。
・ロジスティック回帰分析では、ADOS-2アルゴリズム尺度の陽性度は、PANSS陰性症状スコアのみを使用して予測可能なことが明らかとなった。

 著者らは「ASDと統合失調症の鑑別には、ADOS-2と複数の項目を組み合わせることにより実現可能であることが示唆された」とし「本知見は、ASDと統合失調症の治療戦略の開発に役立つ可能性がある」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)