最初の3歩のビデオ撮影で働き盛りの転倒リスクを機械学習で推定/京都医療センターほか

提供元:ケアネット

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公開日:2025/01/29

 

 70歳までの就業が企業の努力義務となり、生涯現役時代が到来した。その一方で、職場での転倒による労働災害は最も多い労働災害であり、厚生労働省は2015年から「STOP!転倒災害プロジェクト」を展開している。しかし、休業4日以上の死傷者数は、令和3(2021)年度で転倒が最も多く(3.4万人)、平成29(2017)年度と比べ18.9%も増加している(労働者死傷病報告)。保健・医療・福祉分野においてさまざまな転倒リスクアセスメントトツール(AIを含めた)が開発されているが、元となるデータは診療録や看護記録であるため精度に限界があることが指摘されていた。

 そこで、坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)らのVBGA研究グループ(山内 賢氏[慶應義塾大学体育研究所]、パナソニック株式会社)は、フィールド実験に参加した40~69歳の男女190例(平均年齢=54.5±7.7歳、男性48.9%)をトレーニングデータとして、歩き方を撮影し、最初の3歩の3次元動画から歩行特徴量を抽出した。そして、機械学習を用いて転倒リスクを評価するモデルを作成した。

 ラボ実験に参加した男女28例(平均年齢=52.3±6.0歳、男性53.6%)をバリデーションデータとして、転倒リスクを予測することができるかを検証した。

 研究結果はJournal of Occupational Health誌オンライン版2025年1月10日号に掲載された。

 主な結果は以下のとおり。

・最初の3歩につき77の歩行特徴が抽出された。
・男性では、3つの歩行特徴で転倒リスクを予測することができ、その曲線下面積(AUC)は0.909(95%信頼区間[CI]:0.879~0.939、Excellent[優れている])と判定された。
・女性では、5つの歩行特徴から転倒リスクを予測することができ、そのAUCは0.670(95% CI:0.621~0.719、sufficient[十分])と判定された。

 これらの結果を受けて坂根氏は、「従来の転倒リスクを推定する研究は高齢者を対象とした研究が多かった。今回は働き盛りの転倒リスクを、最初の3歩のビデオ画像から判定しており、応用範囲は広く、労働災害防止に役立つ可能性がある」と述べている。

(ケアネット 稲川 進)