日本における遺伝子パネル検査、悪性黒色腫の治療到達割合は6%

提供元:ケアネット

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公開日:2025/01/31

 

 悪性黒色腫(メラノーマ)は、アジア諸国では欧米に比べてまれな疾患であり、前向き臨床試験による検証が難しい状況がある。日本において、包括的がんゲノムプロファイリング検査(CGP)を使用して悪性黒色腫患者の遺伝子変異と転帰を解明することを目的とした後ろ向き研究が行われた。北海道大学の野口 卓郎氏らによる本研究の結果は、JCO Precision Oncology誌2025年1月9日号に掲載された。

 研究者らは、標準治療が終了(完了見込みも含む)し、保険適用となるCGPを受けた悪性黒色腫患者のデータをがんゲノム情報管理センター(C-CAT)から得て、結果を分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・2020年10月~2023年5月に、C-CATに登録された569例の悪性黒色腫患者が対象となった。遺伝子パネル検査の種類はFoundationOneCDxが84%、FoundationOne Liquid CDxが6%、OncoGuide NCCオンコパネルシステムが9.7%で、それぞれ324、324、137遺伝子が解析対象となった。
・悪性黒色腫の発生部位は皮膚悪性黒色腫が64%、粘膜悪性黒色腫が28%、ブドウ膜悪性黒色腫が7%だった。
・遺伝子変異で多かったものはBRAFが25%、NRASが20%、NF1が17%、KITが17%だった。BRAFの82%、NRASの97%、NF1の69%、KITの54%が特定の薬剤で対応可能な変異だった。
BRAF V600E/K変異は皮膚の22%、粘膜の2%で発生したが、ブドウ膜では発生しなかった。皮膚悪性黒色腫における平均腫瘍負荷は4.2variants/Mbだった。
BRAF V600E/K変異体を有する患者のうち、16例は検体採取前にBRAF/MEK阻害薬による治療を受けている一方で、66例は受けていなかった。以前にBRAF標的療法で治療を受けた患者は、治療を受けていない患者よりも頻繁にBRAFおよび細胞周期遺伝子の増幅を示した。
・Molecular Tumor Board(MTB:がんゲノム医療カンファレンス)は全体の3分の1の患者に治療の推奨を行ったが、実際に推奨された治療を受けた患者は36例(6%)だった。36例中29例は詳細な治療情報が得られ、10人は米国食品医薬品局(FDA)承認薬以外の治療を受けていた。

 研究者らは「BRAFNRASNF1KITにおける遺伝子変化は、日本人の悪性黒色腫患者によく見られるが、推奨に従って治療を受けた患者は少なかった。日本においては承認薬、もしくは臨床試験における治療薬へのアクセスを容易にすることが求められている」とした。

(ケアネット 杉崎 真名)