統合失調症は、慢性的な精神疾患であり、さまざまな症状が認められる疾患である。その症状は、大きく陽性症状、陰性症状、認知機能に分類される。統合失調症の病因は多因子性であり、遺伝的、神経生物学的、環境的因子が複雑かつ相互に関与しており、神経生物学的因子は、さまざまな神経伝達物質システムの異常と関連していると考えられる。この多因子性の病因および神経生物学的因子により、症状や臨床所見が多種多様となる。現在の抗精神病薬による治療は、依然として課題に直面しており、新たな治療法が求められている。最近の研究では、統合失調症患者と健康対照者における腸内マイクロバイオームの違いが明らかになっており、統合失調症と胃腸の健康に複雑な関連があると報告され、マイクロバイオームを標的とした介入が、臨床症状の改善に寄与する可能性が示唆されている。ブラジル・サンパウロ大学のLucas Hassib氏らは、薬物療法中の統合失調症患者の臨床アウトカムに対するマイクロバイオーム治療の有効性を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Brain,Behavior, & Immunity-Health誌2024年12月11日号の報告。
主な内容は以下のとおり。
・81件の研究より、バイアスリスクの低い7件のランダム化比較試験、2件の非盲検試験を含む9件の研究(417例)をメタ解析に含めた。
・全体的な複合エフェクトサイズでは、マイクロバイオーム治療後の臨床症状の有意な改善が示されたが(Hedges'g=0.48、95%信頼区間:0.09〜0.88、p=0.004、I2=62.35%)、エフェクトサイズは小さく、研究の異質性は中程度であった。
・臨床研究および前臨床研究において、とくにラクトバチルス属とビフィズス菌属によるマイクロバイオーム治療は、神経、免疫、代謝経路に作用し、脳腸軸を介して統合失調症の症状に効果的な影響をもたらす可能性が示唆されている。
著者らは「統合失調症の主要または補助的な治療におけるマイクロバイオーム治療の可能性を明らかにするためには、大規模かつ高品質な試験が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)