重度の精神疾患のマネジメントにおけるアリピプラゾールの心代謝への安全性および有効性の比較に関するエビデンスは限られており、その結果は一貫していない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlvin Richards-Belle氏らは、他の第2世代抗精神病薬と比較したアリピプラゾールの心代謝プロファイルおよび有効性を調査した。PLoS Medicine誌2025年1月23日号の報告。
英国・プライマリケアにおけるアリピプラゾールとオランザピン、クエチアピン、リスペリドンを直接比較した観察エミュレーションを実施した。データは、Clinical Practice Research Datalinkより抽出した。対象は、2005〜17年に新たに抗精神病薬を使用した重度の精神疾患(双極症、統合失調症、その他の非器質性精神病)成人患者。2019年までの2年間、フォローアップを行った。主要アウトカムは、1年後の総コレステロール値(心代謝安全性)とした。主な副次的アウトカムは、精神科入院(有効性)とした。その他のアウトカムには、体重、血圧、すべての原因による治療中止、死亡率などを含めた。分析では、人口統計、診断、併用薬、心血管代謝パラメータなどのベースライン交絡因子で調整を行った。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者数は2万6,537例。その内訳は、アリピプラゾール群3,573例、オランザピン群8,554例、クエチアピン群8,289例、リスペリドン群6,121例。
・年齢中央値は53歳(四分位範囲:42〜67)、女性の割合は55.4%、白人の割合は82.3%、統合失調症の割合は18.0%。
・アリピプラゾール群における1年後の総コレステロール値は、オランザピン群(調整平均[aMD]:−0.03、95%信頼区間[CI]:−0.09〜0.02、p=0.261)、クエチアピン群(aMD:−0.03、95%CI:−0.09〜0.03、p=0.324)、リスペリドン群(aMD:−0.01、95%CI:−0.08〜0.05、p=0.707)と同等であった。
・体重や血圧などの他の心代謝パラメータは、とくにオランザピン群と比較し、アリピプラゾール群のアウトカムが良好であることが示唆された。
・入院歴で調整した後、アリピプラゾール群の精神科入院率は、オランザピン群(調整ハザード比[aHR]:0.91、95%CI:0.82〜1.01、p=0.078)、クエチアピン群(aHR:0.94、95%CI:0.85〜1.04、p=0.230)、リスペリドン群(aHR:1.01、95%CI:0.91〜1.12、p=0.854)と同等であった。
著者らは「重度の精神疾患患者に対するアリピプラゾール治療は、他の第2世代抗精神病薬と比較し、1年後の総コレステロール値は同等であったが、体重や血圧などの他の心代謝パラメータは良好であり、有効性の違いも認められなかった」とし「本結果は、新規の重度精神疾患患者に対する抗精神病薬の選択時において、臨床意思決定の根拠となるであろう」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)