乳がんにおいて、全ゲノムシークエンス(WGS)を用いた循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイにより、ベースライン時および追跡調査時の検出が改善され、臨床的な再発診断までの期間(リードタイム)が長くなることが、英国・The Institute of Cancer ResearchのIsaac Garcia-Murillas氏らによる後ろ向き研究で示唆された。Annals of Oncology誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。
ctDNAに基づく分子的残存病変(MRD)の検出は、再発リスクの高い患者を特定するための戦略となる。今回、WGSに基づく超高感度のtumor-informed ctDNA プラットフォームを使用して早期乳がん患者のプロファイリングを実施した。本研究では、転移のない原発性乳がん78例(トリプルネガティブ乳がん23例、HER2+乳がん35例、HR+乳がん18例、不明2例)の血漿617検体(中央値:8、範囲:2~14)を分析。検体は、診断時(治療前)、術前化学療法の2サイクル目、術後(術前化学療法を受けた場合)、術後1年間は3ヵ月ごと、その後は6ヵ月ごとに採取された。血漿DNAはNeXT Personal MRDプラットフォームを用いて分析され、1例当たり1,451バリアント(中央値)を追跡する個別化ctDNAシークエンスパネルを作成した。MRD検出は臨床転帰と相関していた。
主な結果は以下のとおり。
・ctDNAは2.19~204,900PPM(中央値:405)の範囲で検出され、検出されたctDNAの39%は100PPM未満の超低レベルであった。
・診断時の検体があった50例中49例(98%)は、治療前にctDNAが検出されていた。
・追跡期間中央値76ヵ月(範囲:5~118)において、ctDNAの検出は、再発高リスク(log-rank検定:p<0.0001)と全生存期間の短縮(p<0.0001)に関連し、ctDNA検出から臨床的な再発までのリードタイム中央値は15ヵ月(範囲:0.9~61.5)であった。
・再発した11例すべてでMRDが同定され、MRD初回検出時のctDNA中央値は13.1PPMであった。
・ctDNAが検出されなかった64例はすべて、追跡期間中に再発がみられなかった。
・エクソームを用いたMRD検出アッセイより、感度とリードタイムが改善した。
本研究の結果、全ゲノムを利用したMRDアッセイでは乳がん再発までのリードタイムが長く、無再発生存と強く関連していた。また、診断時のctDNA検出率は、エクソームを利用したtumour-informedアッセイで報告された検出率より高かった。
(ケアネット 金沢 浩子)