乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法は好中球減少症を引き起こすリスクが高いため、予防的に持続型G-CSF製剤ペグフィルグラスチム(Peg G)が投与されることが多い。今回、Peg Gを省略したdose-denseパクリタキセル療法であってもスケジュールを遅延させることなく治療の完了が可能であり、安全性に問題はなく、薬剤費が削減できることを、東北労災病院の大竹 かおり氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。
これまでの報告で、パクリタキセルを高用量で投与する場合であってもPeg Gを有効かつ安全に省略できることが示唆されている。Peg Gの有害事象や薬剤費というリスクを低減できる可能性があるが、東アジア人では化学療法による骨髄抑制が生じやすい傾向があるため、東アジア人におけるエビデンスが求められていた。そこで大竹氏らは、東北労災病院の乳がん患者のデータをレトロスペクティブに解析し、dose-denseパクリタキセル療法でPeg Gを省略した場合の有効性と安全性を評価した。
対象は、2019年2月~2024年3月にdose-dense EC療法を行い、dose-denseパクリタキセル療法を4サイクル完了した患者で、投与スケジュール、有害事象、相対用量強度(relative-dose-intensity)、薬剤費をPeg G投与群とPeg G非投与群で比較した。なお、Peg G非投与群で好中球減少症が発現した場合はPeg Gの投与が認められた。
主な結果は以下のとおり。
・合計48例の患者が解析対象となり、Peg G投与群が15例、Peg G非投与群が33例であった。年齢中央値は49歳(範囲:31~66)、全例がアジア人で、ベースライン時の特性は両群でバランスがとれていた。
・相対用量強度は両群ともに高く、投与群は0.961、非投与群は0.985で両群間に有意差は認められなかった(p=0.125)。
・各サイクルの投与予定日に、非投与群で好中球減少症のためにPeg Gの投与が必要になったのは最大(3サイクル目)で12.1%であった。
・各サイクルの1日目に好中球絶対数が1,000/µL超であった割合は、非投与群では4サイクル目に87.9%に低下したが、両群間に有意差は認められなかった(p=0.796)。
・パクリタキセル投与を7週間以内に4サイクル完了した割合は、両群で同等であった(p=0.561)。
・投与群および非投与群で発現した非血液毒性は、疼痛がそれぞれ87%(うちGrade3以上が7%)および91%(45%)、浮腫が47%(0%)および48%(3%)、神経障害が87%(7%)および91%(27%)であった。
・4サイクルの平均薬剤費は、投与群が56万4,681円、非投与群が17万9,214円であり、両群間に有意差が認められた(p<0.001)。
これらの結果より大竹氏は、好中球などの血液検査の必要性を強調したうえで、「アジア人に対する乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法において、Peg Gの省略は有望な選択肢となる可能性がある」とまとめた。
(ケアネット 森)