長時間の昼寝は心房細動リスクを高める?

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/05/10

 

 30分以上の昼寝は、不整脈の一種である心房細動のリスク増加と関連するようだ。スペインで実施された新たな研究で、昼寝を30分以上する人では、昼寝の時間が30分未満の人に比べて、心房細動の発症リスクが90%高いことが明らかになった。フアン・ラモン・ヒメネス大学病院(スペイン)のJesus Diaz-Gutierrez氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病予防学会(4月13〜15日、スペイン・マラガ)で発表された。

 心房が十分に収縮できずに小刻みに震えることで脈が不規則になる状態を心房細動という。心房細動では、心房内の血液がよどんで血栓ができやすくなるため、脳卒中リスクも5倍になると研究グループは説明している。今回の研究でDiaz-Gutierrez氏らは、ナバーラ大学がスペインの大学卒業生を対象に実施している前向きコホート研究のデータを用いて、昼寝の長さと心房細動リスクとの関連を検討した。対象は、研究開始時には心房細動がなかった2万348人(平均年齢38歳、女性61%)。これらの対象者は、昼寝の平均時間に応じて、昼寝をしない群、短時間の昼寝(30分未満)をする群、30分以上の昼寝をする群の3群に分けられた。

 中央値13.8年に及ぶ追跡期間中に、131人が心房細動を発症した。解析の結果、30分以上の昼寝をする群が心房細動を発症するリスクは、短時間の昼寝をする群のほぼ2倍であることが明らかになった〔ハザード比(HR)1.90、95%信頼区間1.26〜2.86〕。その一方で、昼寝をしない群では、短時間の昼寝をする群に比べて心房細動の発症リスクに有意な上昇は認められなかった(同1.26、0.82〜1.93)。

 次に、昼寝をしない人を除外した上で、心房細動の発症リスクが最小になる昼寝の時間の長さを調べるための二次解析を行った。対象者は1日当たりの昼寝の平均時間に応じて、15分未満、15〜30分、30分以上の3群に分類された。その結果、昼寝の時間が30分以上の群に比べて、15分未満の群では心房細動の発症リスクが42%(HR 0.58、95%信頼区間0.35〜0.95)、15〜30分の群では56%(同0.44、0.27〜0.72)低下することが明らかになった。

 Diaz-Gutierrez氏は、「この研究結果は、昼寝を30分未満にとどめるべきことを示唆するものだ。夜間によく眠れなかったからといって、昼寝でその不足分を補おうとするのはやめた方が良い」と述べている。さらに同氏は、「最適な昼寝の長さは15分から30分であることがうかがわれる。ただし、短い昼寝が昼寝をしないよりも望ましいのかどうかを判断するには、より大規模な研究が必要だ」と話す。

 では、昼寝と健康との関連は、どのように説明され得るのか。Diaz-Gutierrez氏は、考えられる説明として、「例えば、長時間の昼寝は体内時計(概日リズム)を乱すため、それが夜間の睡眠時間の短縮、夜間の覚醒頻度の増加、身体活動の減少につながる可能性がある。逆に、短時間の昼寝は、概日リズムを改善するため、血圧の低下やストレス軽減をもたらす可能性がある」としている。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2023年4月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら