EBウイルスが腎移植後のリンパ増殖性疾患に関与

提供元:HealthDay News

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公開日:2025/03/10

 

 腎移植は命を救うことにつながり得るが、移植を受けたレシピエントの中には、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)のリスクの高い人のいることが、新たな研究で示唆された。リスクを高める元凶は、伝染性単核球症の原因ウイルスとして知られているエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)であるという。米ペンシルベニア大学病院腎電解質・高血圧部門のVishnu Potluri氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に1月28日掲載された。

 PTLDは、臓器移植後などに免疫抑制療法を受けている患者に発生する異常なリンパ増殖性疾患の総称である。EBVは、PTLDのほかにもいくつかのがんのリスクに関連することが示されている。米国では、EBVに感染しているか感染歴を持つ成人の割合は90%以上に上る。過去の研究では、EBV感染歴のないレシピエントがEBV感染ドナーからの臓器を移植された場合、1〜4%がPTLDを発症する可能性のあることが示唆されている。しかし、この推定値は詳細なデータが不足した限られた情報に基づいたものであった。

 Potluri氏らはこの研究で、米国の大規模移植センター2施設のデータを分析した。対象として、ドナーがEBV陽性でレシピエントがEBV陰性(EBV D+/R−)のケースと、ドナー、レシピエント、および移植の特徴が類似したドナーとレシピエントの双方がEBV陽性(EBV D+/R+)のケースを1対3の割合で選び出した(EBV D+/R−レシピエント104人、EBV D+/R+レシピエント312人、平均年齢42歳)。

 EBV D+/R−レシピエントの48.1%(50人)が移植から中央値で198日後にEBV DNAemia(EBVのDNAが血中で検出される状態)を発症し、22.1%(23人)は移植から中央値で202日後にPTLDを発症していた。また、同レシピエントでは、あらゆる原因による生着不全率が有意に高く(ハザード比2.21、95%信頼区間1.06~4.63)、死亡率も高かったが、統計学的に有意ではなかった(同2.19、0.94~5.13)。

 研究グループは、これらのデータに基づくと、成人の腎移植症例の最大5%、年間1,200人に上る患者がPTLDを発症する可能性があることになり、この値は、全米の登録データに基づく従来の推定値よりも5~10倍高いと指摘している。Potluri氏は、「臓器のドナーやレシピエントのウイルス曝露歴の追跡において不完全な報告やミスがあるため、全米登録データではPTLDの発症率が過小評価されている可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。

 共同研究者の1人で、論文の上席著者である米ピッツバーグ大学腎電解質部門のChethan Puttarajappa氏は、「PTLDがレシピエントの生存にもたらす重大な脅威、さらに今回の研究の結果と先行データの間に大きな開きが存在することを考慮すると、われわれの研究は、この脆弱な移植患者集団の安全性と生存率を向上させるためのさらなる研究を優先して行うことを喚起する役割を果たすものだといえる」と話している。

 この研究結果は、腎移植患者のEBVとPTLDのモニタリングのあり方を変える時期に来ていることを示唆している。論文の共著者の1人である、ペンシルベニア大学医学部のEmily Blumberg氏は、「われわれは、患者のEBV感染のモニタリング方法と、これらの高リスク患者に対する免疫抑制の管理方法を再考する必要がある。これには、早期からルーチンでEBV検査を行うこと、個別化した免疫抑制療法の調整を検討することが含まれる」と述べている。

 米国ではEBVのスクリーニング率は施設によって異なり、多くの施設は腎移植後のEBVスクリーニングをルーチンで実施していない。

[2025年2月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら