米疾病対策センター(CDC)は5月15日、ヘルス・アラート・ネットワークを通して、サル痘ウイルスに感染するリスクのある人にワクチンを接種するよう呼びかけた。背景には、2022年夏にピークに達して以降、徐々に減少していたサル痘(2023年2月にエムポックスに名称変更)の罹患者数が再び増加に転じる可能性に対する危惧がある。CDCは、「人々が集うフェスティバルやその他のイベントを通して、2023年の春から夏にかけてサル痘が再び流行する可能性がある」と述べている。
米ワイル・コーネル大学医学部パンデミック予防・対策センターのディレクターであるJay Varma氏はCNNに対し、「今後数カ月の間にサル痘患者が急増する可能性がある。しかし、リスクのある人の多くはすでに感染したか、あるいはワクチンが普及してきたため、おそらく昨年ほどの規模にはならないだろう」と語った。ただ、同氏によると、過去の感染歴やワクチン接種による保護がどの程度続くかについては不明だという。
CDCは目下、2023年4月17日から5月5日の間に、米シカゴで確認された12例のサル痘確定症例と1例のサル痘疑い症例について調査を進めている。これらの症例は、全て男性(24〜46歳)である。13人中9人は、サル痘のワクチンとして承認された天然痘ワクチンの「ジンネオス」を2回接種済みであった。また、4人は直近で、ニューヨーク、ニューオリンズ、メキシコへ旅行していた。
過去のサル痘のアウトブレイクのほとんどは海外旅行と関連していたが、2022年の春には、人と人との接触によってウイルスは世界中に急速に広まった。CDCは、感染者はゲイやバイセクシュアルの男性、MSM(男性と性行為をする男性)、トランスジェンダーの人に偏っていたと述べている。このアウトブレイクがきっかけとなり、感染リスクのある人々にワクチン接種を呼びかける活動が行われた。CDCによると、ワクチンを接種してもブレイクスルー感染は起こり得るが、重症度を下げることは可能だという。
CNNによると、サル痘リスクが高いと考えられる人のうち、ワクチンの2回接種を完了したのはわずか23%だという。米National Association of County and City Health Officialsの最高経営責任者であるLori Tremmel Freeman氏はCNNに対し、「最もリスクの高い人々のワクチン接種が必要なレベルに達していないことが大きな懸念だ。現在、米国中西部で新たな感染例が発生しているが、ワクチン接種済みの人では症状が軽いようだ」とワクチン接種の有効性に言及している。Varma氏も、「ワクチンは安全で効果的だ。昨年は、感染を抑えるのに役立った。ワクチンの有効率や効果の持続期間に不明な点があるにせよ、接種しないよりは接種した方が良いのは確実だ」と主張する。
サル痘の主な症状は、水疱のような発疹、発熱、悪寒、リンパ節腫脹、痛み、倦怠感など。免疫力が低下している人が罹患すると、致命的になることもある。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は5月11日、「WHOはサル痘の緊急事態宣言終了を宣言したが、これは、われわれの仕事が終わったことを意味するものではない。サル痘は、あらゆる地域のコミュニティーに今も影響を与え続けている」と語った。
米National Coalition of STD Directorのエグゼクティブ・ディレクターであるDavid Harvey氏は、サル痘は依然として「重大な懸念」であり、地域社会や医療提供者は監視を続ける必要があると語った。同氏は、「予想されたこととはいえ、シカゴの症例は気にかかる」と話しつつも、「ただ、昨年と違って、われわれは今や、何がサル痘に対して有効なのかを知っているし、再びサル痘患者が発生した際には、感染者の増加を抑制するための手段も持っている。ワクチンは安全で効果的であり、症例を減らし、症状の重症度を軽減するのにも役立つ」と話している。
[2023年5月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら