コルヒチンは変形性関節症の進行を抑制する?

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/07/05

 

 2000年以上前から抗炎症薬として使用されてきたコルヒチンが、膝関節や股関節の人工関節置換術が必要となる状態を遅らせるのに役立つ可能性があるようだ。低用量のコルヒチンを使用していた高齢者では、プラセボを使用していた高齢者と比べて、その後2年間に膝関節や股関節の人工関節置換術を受けた人の割合が低かったとする研究結果を、シント・マールテン・クリニック(オランダ)のMichelle Heijman氏らが、「Annals of Internal Medicine」に5月30日発表した。

 変形性関節症(Osteoarthritis;OA)は、老化を含むさまざまな原因により関節が変形して痛みや腫れが生じた状態を指す。OAの治療薬は痛みの緩和には有効だが、現状では、痛みの原因となっている関節の破壊を遅らせる薬はない。一方、コルヒチンは長年にわたってOAとは異なる種類の関節炎をもたらす痛風に対して処方されてきた。また、心膜炎の患者に対しても同薬が使用されることがある。

 コルヒチンは、特定の炎症性サイトカインの産生を抑制することで効果を発揮するが、そのサイトカインはOAの進行にも関与しているとの指摘がある。そこで、Heijman氏らのグループは、2020年に報告された、低用量コルヒチンによる心血管イベントの予防効果を検討した臨床試験において、コルヒチンが投与された患者では、膝関節や股関節の人工関節置換術の施行率も低い可能性があると考え、同試験のデータの探索的な解析を行った。同試験では、5,522人の安定冠動脈疾患患者(平均年齢66歳)のうち2,762人が低用量コルヒチン(1日当たり0.5mg)投与群に、残る2,760人がプラセボ投与群にランダムに割り付けられていた。

 その結果、追跡期間中央値28.6カ月の間に膝関節または股関節の人工関節置換術を受けた患者の割合は、低用量コルヒチン投与群では2.5%、プラセボ投与群では3.5%であり、低用量コルヒチン群の方が低いことが示された(発生率:0.90対1.30件/100人年、ハザード比0.69、95%信頼区間0.51〜0.95)。

 Heijman氏によると、解析したデータには患者のOAの有無に関する情報が含まれていなかった。しかし、人工股関節全置換術や人工膝関節全置換術を受ける患者の大多数は、重度のOAを理由にそれらの手術を受けることから、同氏らは、今回の解析結果にコルヒチンによる関節炎の進行抑制効果が反映されているのは確かだとの考えを示している。

 Heijman氏らは、「ただし、この研究には留意すべき点がある。それは、本研究が低用量コルヒチンによる心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントの予防効果を調べるために実施された臨床試験のデータを解析したものである点だ」と強調する。つまり、この解析結果は、低用量コルヒチンが実際に変形性膝関節症や変形性股関節症の進行を抑制したことを証明するものではないということだ。同氏は、「それでも解析結果は、OAの治療におけるコルヒチンの有用性を調べる研究を実施することの説得力ある論拠になる」と主張している。

 その上でHeijman氏は、「その結果が明らかになるまでは、コルヒチンをOAの治療薬として使用することは推奨できない」との見解を示す。そして、「もしOAに対するコルヒチンの効果が確認できれば、OAの患者に対して安全で有効な治療法を提供できるようになる」と話している。

 米ホスピタル・フォー・スペシャル・サージャリーのリウマチ専門医であるLinda Russell氏も、「この解析結果だけでは、コルヒチンが人工関節置換術を遅らせることを証明するには不十分」との見解を示す。同氏は、試験に参加する前から手術が予定されていた患者が何人いたのかが不明である点も指摘している。

 Russell氏は、人工関節置換術を要する状態になるのを予防したり、遅らせたりするためにOAの患者ができることとして、必要に応じた減量や関節を支える筋肉の強化を挙げている。

[2023年5月31日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら