当時29歳の米国ニュージャージー州の女性、Bethany Moeddelさんは、夜のパーティーに参加した翌日、吐き気と頭痛を感じた。二日酔いだと判断した。とはいえ、ボーイフレンドの弟が、カトリック教徒になるための重要な儀式である初聖体が予定されていたため、寝て過ごすわけにはいかなかった。
教会に到着しいったんは礼拝堂の席に着いたが不快感は続いていた。礼拝堂の中で嘔吐してしまわないように、席を外して車に戻った。暑い日だったので、車のドアを開けたままにして休んだ。次に彼女が覚えているのは、救急隊員の声である。「リビング・ウィルはありますか?」と隊員が尋ねた。彼女が「なぜ?
私は死ぬの?」と聞き返すと、「分かりません」という答えが返ってきた。
2日後、Moeddelさんは集中治療室(ICU)で目覚めた。左半身を動かすことができなかった。ベッドサイドに親友が座っていて、脳卒中が起きたことを伝えられた。より正確には、脳の右側の額の近くに1カ所、耳の後ろ辺りに1カ所、計2カ所の梗塞巣が確認されていた。医師から「腕を上げてみて」などの指示が立て続けに出され、Moeddelさんは混乱し、苛立ちと怒りを感じた。彼女は自分の体に何が起こっているのかをまだ十分理解していなかった。
ICUで1週間強過ごし、その後、リハビリテーション病院で約2カ月間を過ごした。退院に際しては車椅子と杖が用意され、介護施設で生活するか、両親とともに生活するかという選択肢が示された。結局、オハイオ州から車で来た両親とともに、実家に戻ることになった。「私は数週間もすれば回復すると思っていた。まさか、その状態が永久に続くとは考えていなかった」と彼女は振り返る。
15年の時が経過した。現在44歳のMoeddelさんは、まだ左半身の部分的な麻痺が残っているものの、自力で歩けるし、階段を上ったり車を運転することもできる。ただ、今もオハイオ州の実家暮らしだ。数年前にニュージャージー州に戻ろうと試みたが、長くは続けられなかった。
脳卒中を発症前、Moeddelさんは弁護士補助の資格取得を目指し、仕事と勉強を両立させていた。現在は電子メールとライブチャットを利用したリモートワークで、顧客サービス業務に携わっている。それだけでなく、脳卒中の啓発活動にボランティアとして参加し、学校を訪問して子どもたちに脳卒中の症状について教えている。また、米国心臓協会(AHA)主催のミニマラソン・ウォーキング大会にエントリーして、それをリハビリ継続のモチベーションとしている。昨年は8マイル(約15km)以上歩き、今年も同じくらいの距離を歩き切った。
この15年の間に、父親が亡くなった。2012年のことだった。一方、母親のRuth Moeddelさんは、「われわれ親子は役割があべこべだ。成人した子どもが年老いた親の世話をする代わりに、年老いた親が成人した子どもの世話をするのだから」と言いながらも、娘の健康を心配している。彼女は、新型コロナウイルス感染症のために、息子も亡くした。
そんなRuthさんは、「Bethanyはタフで立ち直る力を持っている。彼女がリハビリ病院を退院する時、私の娘が車椅子から離れられることは決してないだろうと誰もが言った。しかし今、娘は驚くほど元気に過ごしている」と語っている。
[2023年7月19日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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