若年期の心肺機能が高いと後年のがんリスクが低い可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/10/05

 

 若い男性が心肺機能を高めておくと、後年にいくつかの部位のがんリスクを下げられるかもしれない。ヨーテボリ大学(スウェーデン)のAron Onerup氏らが、同国軍の兵士を対象とする大規模なコホート研究のデータを解析した結果であり、詳細は「British Journal of Sports Medicine」に8月15日掲載された。9種類のがんリスクが有意に低下する可能性があるという。

 この研究の解析対象は、1968~2005年に同国で兵役についた16~25歳(平均18.3±0.7歳)の男性から、兵役以前または兵役後5年の間にがんと診断されていた人、兵役から5年以内に死亡した人、およびデータ欠落者を除外した107万8,000人。心肺機能は、徴兵検査で施行されていた兵士の適性検査に基づくスタニンスコアという指標から、低・中・高の3群に分けて評価。そのカテゴリーと18種類の部位別がんリスクとの関連を検討した。

 平均33年の追跡で、8万4,117人が何らかのがんを診断されていた。年齢、兵役に就いた年、BMI、徴兵時の親の教育歴などを調整後、スタニンスコアのカテゴリーが高いほど、9種類のがんの有意なリスク低下が認められた。例えば頭頸部がんは、スタニンスコアが低値群を基準として高値群のハザード比(HR)が0.81(95%信頼区間0.74~0.90)、食道がんは同0.61(0.50~0.74)、胃がん0.79(0.67~0.94)、肝臓・胆管・胆嚢がん0.60(0.51~0.71)、結腸がん0.82(0.75~0.90)、腎臓がん0.80(0.70~0.90)、肺・気管支がん0.58(0.51~0.66)だった。

 反対に、前立腺がんは、スタニンスコア高値群でHR1.07(1.03~1.12)、皮膚がんは1.31(1.27~1.36)であり、有意なリスク増大が観察された。著者によると、前立腺がんについては退役後のスクリーニング頻度が高いことにより早期発見が増加すること、皮膚がんについては兵役期間中の日光への曝露の影響が考えられるという。

 全てのがんを統合して解析すると、スタニンスコア低値群に対し高値群はHR1.06(1.04~1.08)であり、有意なリスク上昇が観察された。ただし、徴兵検査時の最大酸素摂取量(VO2max)や最大パワー(Wmax)との関連は非有意だった。その一方で、前記の部位別の解析で示されたリスク低下は、VO2maxやWmaxとの関連の解析でも確認された。

 Onerup氏は、「われわれの研究結果は、米国臨床腫瘍学会のガイドラインが運動を推奨していることと一致するものと言える」とする一方で、「観察研究であるため本研究のみでは因果関係の証明にはならない。運動以外のライフスタイル因子も、示された結果に関与している可能性がある。また、本研究は心肺機能の経時的な変化を追跡評価しておらず、遺伝的背景も検討していない」と述べている。それらの限界点はあるものの、「健康な若年男性において心肺機能が高いことは、検討した18の部位のがんのうち9種類のリスク低下と関連しており、特に消化管のがんリスクが低かった。この結果は、若年男性の心肺機能向上を目的とする介入促進のための公衆衛生戦略策定の根拠となり得るのではないか」とまとめている。

[2023年8月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら