趣味を持つこと、例えば編み針や絵筆を手に取ったり、あるいは好きな小説を読んだりすることは、高齢者の抑うつ症状の軽減につながるという研究結果が発表された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)疫学・ヘルスケア研究所のHei Wan Mak氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に9月11日掲載された。
この研究は、米国、日本、中国、英国、その他のヨーロッパ諸国(オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、イタリア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス)の計16カ国に及ぶ5件の研究データを用いて、65歳以上の高齢者9万3,263人(各国対象者の平均年齢71.7〜75.9歳)を対象に行われた。趣味は、「余暇に楽しみとして取り組む活動」と定義され、ガーデニング、ゲーム、美術工芸、ボランティア活動、読書、サークル活動など、多岐にわたるものが含まれた。
4年から8年にわたるデータを分析した結果、趣味を持つことは、抑うつ症状の軽減、主観的な健康感、幸福感、生活満足度の増加に関連していることが明らかになった。この結果は、パートナーや配偶者との同居の有無、仕事の有無、世帯収入などの他の要因を調整しても変わらなかった。
Mak氏は、「4つの結果のうち、趣味と最も強い関連を示したのは生活満足度だった。趣味には、自分の心と体をコントロールできていると感じたり、生きがいを見つけたり、日々の問題に取り組む能力があると感じたりするなど、多くの働きがある。これらの働きにより、後年の生活満足度が向上するのかもしれない」と同大学のニュースリリースで述べている。
研究グループによると、この研究は観察研究であるため、因果関係を証明することはできないが、趣味と幸福の間に関連がある可能性を示唆しているという。Mak氏はさらに、「趣味とウェルビーイングの関係は双方向であり、精神的に健康な人ほど趣味を持つ傾向があり、趣味を続けることで生活満足度が向上する可能性がある」と話す。
趣味を持つ人の割合は国によって大きく異なり、スペインでは51.0%だったのに対し、デンマークでは96.0%、スウェーデンでは95.8%、スイスでは94.4%だった。割合が最も低かったのは中国で、37.6%だった(ただし、中国では社会的な趣味についてのみ調査され、一般的な趣味については調査されていない)。また、平均余命や国民の幸福度が高い国では、趣味を持つ人の割合が高く、趣味を持つこととウェルビーイングとの関連も、これらの国でより強かった。
Mak氏は、「われわれの研究結果が示しているのは、加齢によって精神的な健康やウェルビーイングが低下するのを、趣味を持つことで防げるという可能性だ。この可能性は、多くの国や文化的環境で一貫して認められた」と述べている。さらにこの研究は、「高齢者のウェルビーイングと健康増進の方法として、趣味へのアクセスを促進する政策立案者を支援するものでもある」と付け加えている。
[2023年9月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら