不眠症とうつ病は相互に関連しており、抗うつ薬治療の初期段階で睡眠の改善が認められれば、うつ病治療においても良好な治療アウトカムが得られる可能性が高まる。オランダ・フローニンゲン大学のCornelis F. Vos氏らは、精神病性うつ病患者の早期不眠症改善が、その後の治療アウトカムが予測可能であるかを調査し、これが治療特異的であるかを評価するため、早期不眠症改善と治療タイプとの関連を検討した。その結果、精神病性うつ病患者に対する早期不眠症改善は、治療薬の種類とは関係なく、良好な治療アウトカムと関連していたと報告。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2023年8月31日号の報告。
精神病性うつ病患者114例を対象に抗うつ薬(ベンラファキシン、イミプラミン)と抗精神病薬併用(ベンラファキシン+クエチアピン)による7週間の治療を比較したランダム化比較試験の2次解析として実施された。早期不眠症改善の定義は、2週間後の不眠症状20%以上減少とした。うつ症状の評価には、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D-17)を用いた。早期不眠症改善と治療アウトカムとの関連性を評価するため、ロジスティック回帰を用いた。また、相互の影響を評価するため、早期不眠症改善と治療タイプとの関連を評価した。早期不眠症改善の予測値と全体的なうつ病に対する早期治療反応(2週間後のHAM-D-17スコア20%以上低下)との比較を行った。
主な結果は以下のとおり。
・早期不眠症改善は、治療反応、うつ病寛解、精神症状寛解と関連が認められた。
【治療反応】オッズ比(OR):7.9、95%信頼区間(CI):2.7~23.4、p≦0.001
【うつ病寛解】OR:6.1、95%CI:1.6~22.3、p=0.009
【精神症状寛解】OR:4.1、95%CI:1.6~10.9、p=0.004
早期不眠症改善と治療タイプとの間に、うつ病の治療転帰に対する相互の影響は認められなかった。
著者らは、これらの結果を踏まえて「早期不眠症改善と全体的なうつ病に対する早期治療反応は、治療アウトカムに対する同等の予測能を有していた。早期不眠症改善の一般性を検討するには、今後の研究が必要である」としている。
(鷹野 敦夫)