一見けがのリスクが高そうに思えるマウンテンバイクは、実はそれほど危険な乗り物ではないとする研究結果が報告された。カーティン大学(オーストラリア)のPaul Braybrook氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に8月30日掲載された。マウンテンバイク利用に伴うけがの大半は軽度の切り傷や打撲などにとどまることから、健康のためのスポーツの良い選択肢の一つと言えるという。
近年、自然環境でのサイクリングやジョギング、ハイキングなどの「トレイル」と呼ばれるアウトドアスポーツの人気が、世界的に高まっている。Braybrook氏は、「それらのスポーツ中に発生する傷害に対する医療体制を整えるために、傷害のリスクやタイプを把握する必要があった」と、この研究の背景を述べている。そこで同氏らは、既報研究を対象とするシステマティックレビューにより、その実態の把握を試みた。
CINAHL、Cochrane、ProQuest、PubMed、Scopusという文献データベースを用いて、このトピックに関する文献を検索。1万95件がヒットし、ハンドサーチで3件を追加して重複削除後に2人の研究者がタイトルと要約に基づきスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は、3人目の研究者の判断により解決した。134件を全文精査の対象とし、最終的に24件を適格と判断した。
24件中、マウンテンバイクに関する報告が17件、ハイキングに関する報告が7件であり、受傷者数の合計は、マウンテンバイク関連が22万935人、ハイキング関連が1万7,757人だった。解析の結果、マウンテンバイクを運転中に一般的に見られるけがは、打撲、すり傷、切り傷など軽度なものであることが分かった。受傷部位は、上肢が最も多く報告されていた。一方、ハイキング中のけがで多いのは、足首の捻挫や水疱であり、部位としては下肢が多かった。なお、けがの定義の不均一性などのため、メタ解析は行われなかった。
Braybrook氏は、「マウンテンバイクは一般的に『エクストリームスポーツ』(過激なスポーツ競技)の一種と見なされているが、報告されたけがの大半は軽度であることが判明した」と総括している。ただし、「マウンテンバイクでは腕の骨折が一定程度見られた。また、ある研究では頭部外傷のリスクが高いことも示され、これはヘルメット着用の重要性を浮き彫りにするものと言える」と述べている。
なお、マウンテンバイク関連の17件の報告のうち3件で、各1人の死亡例が報告されており、そのうち2人は頭部外傷であり、うち1人はヘルメットを着用していなかったことが確認されていた。Braybrook氏によると、マウンテンバイクやハイキングの人気の高まりを背景に、身体保護具の性能も向上してきており、それとともに重症のけがを負うリスクがより低下してきているという。
同氏はまた、「マウンテンバイクはエクストリームスポーツとして発展してきたという歴史があるが、現在ではかなり変化してきている」とし、具体的には、「肥満、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のリスク軽減だけでなく、心臓や血管の状態の改善も期待できる」と、健康上のメリットを述べている。その上で、「サイクリングやハイキングなどのトレイルに出かける機会をなるべく増やした方が良い。まれにすり傷や切り傷、打撲を負うことがあるかもしれないが、トレイルは楽しいアクティビティーであり、健康の維持・増進に最適だ」と付け加えている。
[2023年9月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら