糖尿病罹患後に発症する合併症の一つに男性の勃起不全(ED)が挙げられることはよく知られているが、EDが前糖尿病や糖尿病の発症予測因子の一つであるという、逆の時間的関係も存在することを示すデータが報告された。論文の著者らは、若年のED患者を対象として糖尿病のスクリーニングを行うことを提案している。米セントルイス大学のJane Tucker氏らの研究によるもので、詳細は「Preventive Medicine」に7月25日掲載された。
この研究は、同大学が管理している米国中西部の大規模な医療データシステムを用いて行われた。2008年1月~2022年6月に受療行動があり、前糖尿病や糖尿病の既往のない18~40歳の男性23万1,523人(平均年齢28.3±7.0歳)のデータセットを作成。そのうち1.4%に相当する3,131人がEDを新規診断されていた。非ED群に比較しED群は、30歳以上(45.0対77.7%)、低テストステロン血症(0.3対5.5%)の割合が高く(いずれもP<0.0001)、肥満や併存疾患(高血圧、脂質異常症、虚血性心疾患、脳血管疾患、心不全、うつ病、不安症など)が多いといった有意差が認められた。
2年間の追跡で3.2%に当たる7,481人(非ED群7,226人、ED群255人)が前糖尿病/糖尿病を発症。非ED群の累積発症率は3.2%であるのに対して、ED群は8.1%であって、交絡因子未調整の相対リスク(RR)は2.57(95%信頼区間2.28~2.90)だった。
評価した全ての交絡因子を調整後もRR1.34(同1.16~1.55)であり、ED群は前糖尿病/糖尿病の新規発症リスクが有意に高かった。前糖尿病を除外して糖尿病の新規診断のみの累積発症率は、非ED群1.4%、ED群3.4%であり、全ての交絡因子を調整後のRR1.38(同1.10~1.74)であって、前糖尿病を併せた前記の解析結果とほぼ同等のリスク上昇が認められた。
ED発症後に前糖尿病/糖尿病が診断されていた255人について、診断のタイムラグを検討すると、3分の1以上に当たる36.5%はED診断と同日に前糖尿病/糖尿病がタイムラグなく診断されていた。また、255人の半数近くに当たる47.5%はED診断から1カ月以内、55.7%は3カ月以内、62.4%は6カ月以内、67.8%は9カ月以内に前糖尿病/糖尿病が診断され、1年以内には、ほぼ4人に3人に当たる73.7%が前糖尿病/糖尿病を診断されていた。
以上に基づき著者らは、「EDの診断は、未診断の前糖尿病/糖尿病の存在や、それらの発症リスクと関連している。EDは前糖尿病/糖尿病の予測因子と言え、プライマリケアの臨床でEDを有する若年男性を認めた場合、糖尿病のスクリーニングを定期的に施行する必要があるだろう」と述べている。
[2023年9月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら