糖分の取り過ぎは2型糖尿病リスクを高めることはよく知られている。一方、高血圧リスクとの関連で注意が呼び掛けられることの多い塩分の取り過ぎも、2型糖尿病リスクを高める可能性のあることが報告された。米チューレーン大学公衆衛生熱帯医学大学院のLu Qi氏らの研究によるもので、詳細は「Mayo Clinic Proceedings」11月号に掲載された。
この研究は、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて行われた。ベースライン時に糖尿病、慢性腎臓病、がん、心血管疾患の既往がなく、料理に塩を加える頻度を問う質問への回答が記録されていた40万2,982人を解析対象とした。中央値11.9年の追跡で1万3,120人の2型糖尿病発症が記録されていた。
料理に塩を「全く、またはほとんど加えない」と回答していた群(55.5%)を基準として、交絡因子調整後の2型糖尿病発症ハザード比は、「時々加える」群(28.1%)が1.11(95%信頼区間1.06~1.15)で、「だいたい加える」群(11.6%)は1.18(同1.12~1.24)、「常に加える」群(4.8%)は1.28(1.20~1.37)であり、塩を加える頻度が高いほど2型糖尿病リスクが高いことが明らかになった(傾向性P<0.001)。
サブグループ解析から、年齢や性別、人種、BMI、C反応性タンパク、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・脂質異常症の有無、食習慣(高血圧予防のためのDASH食に近い食習慣か否か)、教育歴、所得、タウンゼント剥奪指数(貧困など社会的不平等の程度を表す指標)などの違いでは、有意な交互作用は観察されなかった。一方、媒介分析からは、塩の添加と2型糖尿病リスクとの有意な関連は、BMIが33.8%、ウエスト/ヒップ比が39.9%、C反応性タンパクが8.6%媒介していることが示された。また、BMIの媒介効果を除脂肪量(主に筋肉や骨の重量)と体脂肪量とに分けて解析すると、前者は2.0%のみであり、体脂肪量の媒介効果が大きいことが明らかになった。
これらの結果からQi氏は、「塩分制限が高血圧や心血管疾患のリスクを抑制することは既に知られているが、われわれの研究は食卓塩をテーブルに置かないことが、2型糖尿病の予防にも役立つことを初めて示した」と語っている。また、塩の添加と2型糖尿病リスクとの関連のメカニズムについては、「明確には分からないが、塩を加えることで過食につながり、肥満やそれに伴う炎症が亢進するためではないか」と考察している。
研究グループは、このトピックに関する次のステップとして、塩分添加量を研究参加者自身が管理することによって、2型糖尿病のリスクが抑制されることを実証するための臨床試験が必要だとしている。ただしQi氏は、そのような前向き研究のエビデンスのない現時点におけるアドバイスとして、「なるべく減塩を心掛けた食生活を、早めにスタートするに越したことはない」と述べている。
[2023年11月3日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら