米ルイビル大学の研究グループが、特殊なMRI画像から生後24カ月から48カ月の幼児の自閉症を98.5%の精度で診断する人工知能(AI)システムを開発したと発表した。同大学神経学教授で米ノートン小児自閉症センター所長のGregory N. Barnes氏らによるこの研究結果は、北米放射線学会年次総会(RSNA 2023、11月26〜30日、米シカゴ)で発表された。
この研究グループの一員である同大学のMohamed Khudri氏は、「われわれの開発したアルゴリズムは、自閉症の子どもと正常に発達している子どもの脳のパターンを比べて異なるところを見つけ出すように訓練されており、その結果に基づいて自閉症かどうかを診断するものだ」と述べている。
このAIシステムは、拡散テンソル磁気共鳴イメージング(DT-MRI)と呼ばれる画像診断技術を用いたもの。DT-MRIは、白質路と呼ばれる脳内ネットワークに沿って水分子がどのように移動するのかを検出する特殊な技術である。AIシステムは、DT-MRIスキャンから脳組織画像を分離し、水分子の拡散パターンに基づいて脳領域間の結合レベルを調べる。その後、機械学習アルゴリズムが、その拡散パターンに基づいて自閉症の子どもと正常に発達した子どもの脳を比較するという仕組みだ。Barnes氏は、「自閉症は、主として脳内の神経回路や神経細胞間の不適切な結び付きが原因で生じる。DT-MRIは、自閉症の子どもにしばしば認められる社会的コミュニケーションの障害や反復行動などの症状に関連するこれらの異常な結合を捉えるものだ」と説明している。
Barnes氏らは、Autism Brain Imaging Data Exchange-IIから抽出した、生後24カ月から48カ月の幼児226人の脳のDT-MRI画像を用いて、このAIシステムの診断性能を検証した。対象児のうち100人は正常に発達していたが、126人は自閉症だった。その結果、このAIシステムは、97%の感度と98%の特異度で自閉症児を検出し、全体的な正確度は98.5%であることが示された。このことから、AIシステムが自閉症児と非自閉症児を非常に高い精度で区別できることが明らかになった。
Khudri氏は、「われわれのアプローチは、2歳未満の幼児における自閉症の早期発見に向けた、新たな進歩となるものだ。3歳になる前に治療的介入を行うことで、自閉症児がより高い自立性やIQを達成するなどの転帰改善につながると考えている」と述べている。Barnes氏は、「早期介入の背後にある考え方は、脳の可塑性、つまり治療によって機能を正常化する脳の能力を利用することだ」と説明する。
米疾病対策センター(CDC)が発表した2023年の自閉症に関する報告によると、自閉症児のうち3歳までに発達評価を受けているのは半数以下であり、自閉症の基準を満たす子どもの30%は8歳までに診断を受けていないという。Barnes氏は、自閉症の診断が遅れる理由として、検査センターのリソース不足などを挙げている。Khudri氏は、このAIシステムは、影響を受けている脳経路を特定し、それが及ぼしている影響の程度や介入の指針として利用できる重症度スコアに関するレポートを生成するため、診断の迅速化に役立つ可能性があるとの見方を示す。研究グループは、米食品医薬品局(FDA)からAIソフトウェアの認可を得るために、申請中であるという。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[2023年11月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら