ネットサーフィンはメンタルヘルスに悪影響を与えると考えられがちだが、インターネットの使用が心理的ウェルビーイングやメンタルヘルスに大きな脅威を与えることはないことを明らかにした、画期的な研究結果が報告された。これは、国レベルでのインターネットおよびブロードバンドの利用状況を、世界各国の数百万人の心理的ウェルビーイングやメンタルヘルスと比較した上で導き出された結果であるという。英オックスフォード大学インターネット研究所のAndrew Przybylski氏らによるこの研究の詳細は、「Clinical Psychological Science」に11月27日掲載された。
この研究は、インターネットの使用と心理的ウェルビーイングおよびメンタルヘルスとの関連を二つの研究で検討したもの。一つ目の研究では、まず2005年から2022年の間に実施された調査データを基に、168カ国、243万4,203人(15〜89歳)の心理的ウェルビーイングを、人生に対する満足度、ポジティブな経験、およびネガティブな経験の3つの側面から評価。得られた結果を、国民1人当たりのインターネット利用者数とモバイルブロードバンドの契約者数の時系列データと照らし合わせ、過去20年におけるインターネットとモバイルブロードバンドの使用が心理的ウェルビーイングにどのような影響を与えたのかを検討した。
その結果、インターネット技術の使用が広がるにつれ、心理的ウェルビーイングが経時的に変化したことを支持するエビデンスはほとんど/まったく認められないことが明らかになった。ポジティブな経験とネガティブな経験は経時的に増加していたが、この変化は統計学的には、ほぼゼロに等しいことが示された。
二つ目の研究では、保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation;IHME)のGBD(疾病負荷研究)2019で報告されている、2000年から2019年における世界204カ国での不安障害とうつ病、自傷行為の有病率に関するデータを用いて、これらとインターネットおよびモバイルブロードバンドの使用との関連について検討された。その結果、不安障害の有病率には増加が、うつ病と自傷行為の有病率には低下が認められたものの、統計学的には、こうした変化はほぼゼロに等しいことが明らかになった。
Przybylski氏は、「われわれは、年齢や性別によって結果が異なる可能性を考えて詳細に検証したが、特定のグループでよりリスクが高いとする一般的な考えを支持する証拠は見つからなかった」と同大学のニュースリリースで述べている。
このような結果が得られたとはいえ、研究グループは、インターネット利用の影響についての理解を深めるためには、テクノロジー企業からより多くのデータを提供してもらう必要があると主張している。また、「インターネット技術が与える影響に関する研究が停滞している原因は、そのような研究に欠かせない重要なデータが、テクノロジー企業やオンラインプラットフォームによって収集され、非公開で保管されているせいだ」と指摘する。そして、「人々がインターネット技術をどの程度取り入れ、使用しているかに関するデータを、全ての関係者がより詳細に、より透明性をもって研究することが極めて重要だ。これらのデータは、世界的なテクノロジー企業によって、マーケティングや製品改良のために収集され、継続的に分析されてはいるが、残念ながら、個々の研究のために利用することはできないのが現状だ」と述べている。
[2023年11月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら