ホルモン受容体(HR)陽性早期乳がんの診断を受けた50〜60代の閉経後の女性では、乳房温存術後に放射線療法を省略しても、5年間の再発リスクは非常に低いことが示された。米エモリー大学医学部放射線腫瘍学主任教授で同大学ウィンシップがん研究所のReshma Jagsi氏らによるこの研究結果は、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2023、12月5〜9日、米サンアントニオ)で発表されるとともに、「Journal of Clinical Oncology」に12月7日掲載された。
通常、HR陽性乳がんと診断された閉経後の女性は、乳腺腫瘤摘出術を受けた後に、放射線療法とホルモン療法を併用する。しかし最近の研究では、65歳以上の患者は、放射線療法省略してもそれを受けた場合と同等の転帰をたどる可能性が示唆されている。Jagsi氏らは今回の研究で、それよりも若い女性でも同じように放射線療法を省略できるかどうかを検討した。
対象として、閉経後の50〜69歳のステージIで転移のないHR陽性HER2(ヒト上皮細胞増殖因子受容体2)陰性乳がん女性のうち、乳房温存術後の残存腫瘍径が2mm以上で、Oncotype DX 21遺伝子検査の再発スコアが18以下の患者200人(平均年齢62歳、50〜59歳60人、60〜69歳140人)を登録し、乳房温存術後5年間の乳がん再発リスクを調べた。
臨床的経過観察を56カ月以上受けた186人における5年間の全生存率と乳がん特異的生存率はいずれも100%であった。また、5年間で再発が認められなかった対象者の割合は99%(95%信頼区間96〜100)だった。追跡期間中における同側乳房イベント(IBE)の粗率は、50〜59歳で3.3%(2/60人)、60〜69歳で3.6%(5/140人)であり、全再発の粗率は同順で5.0%(3/60人)と3.6%(5/140人)だった。
Jagsi氏は、「これらの知見は、より年齢の若い閉経後女性でも、乳房温存術後に放射線療法を省略しても5年間の乳がん再発リスクは非常に低いことを示すものだ」と述べている。
ただし、より長期的な予後に関してはまだ結論は出ていない。Jagsi氏は、「この年齢層の女性に放射線療法を省略するという選択肢を提供した場合の安全性について、この研究や他の研究でより長期間の追跡調査を行い、確認することが不可欠だ」と強調する。
その一方でJagsi氏は、「今回の研究結果は、女性が決断を下す際に貴重な示唆を与えてくれるものだ」と話す。同氏は、「今回のような研究は、がんの診断によって奪われかねないコントロール感覚を患者が取り戻すのに役立つ複数の治療選択肢を特定するだけでなく、全ての患者が、十分な情報を得た上で自分にとって最善の決断を下すことができるようにするという点で重要だ。なぜならこれらの要素は、がんの診断を受けた患者の経験を改善する方法の特定につながるからだ」と述べている。
[2023年12月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら