プロバイオティクス、特に乳酸菌の摂取は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した同居家族を持つ新型コロナワクチン未接種者のCOVID-19発症を遅らせ、発症した場合でも症状を軽減する効果のあることが、新たな臨床試験で明らかにされた。米デューク大学医学部麻酔科学分野のPaul Wischmeyer氏らによるこの研究の詳細は、「Clinical Nutrition」1月号に掲載された。Wischmeyer氏は、「この研究結果は、COVID-19や将来流行する可能性のある他の疾患との闘いにおいて、共生微生物が貴重なパートナーになり得るという考えに信憑性を与えるものだ」と話している。
プロバイオティクスは、主に消化管に生息する有益な細菌や酵母を増やすように設計されている。「プロバイオティクスに呼吸器感染症を予防する効果があることを示す強力なエビデンスは、COVID-19が発生する前からあった」とWischmeyer氏は説明する。
この研究では、プロバイオティクスの摂取が、COVID-19のリスクを低減するための低リスクで低コスト、かつ導入の容易な方法となり得るかどうかが、二重盲検化ランダム化比較試験で検討された。対象者は、過去7日間で家庭内にCOVID-19罹患者がいた1歳以上の新型コロナワクチン未接種者182人で、新型コロナワクチンが広範に接種されるようになる前の2020年6月から2021年6月の間に試験に登録された。これらの対象者は、曝露後予防として28日間、プロバイオティクス(Lacticaseibacillus rhamnosus GG)を摂取する群(プロバイオティクス群)と、プラセボを摂取する群(プラセボ群)に1対1でランダムに割り付けられた。このうち135人(プロバイオティクス群66人とプラセボ群69人)が治療を開始した。主要評価項目は、COVID-19曝露から28日間でのCOVID-19の発症であった。
その結果、プロバイオティクス群ではプラセボ群に比べて、COVID-19の発症リスクが有意に低いことが明らかになった(26.4%対42.9%、P=0.02)。全体的なCOVID-19罹患率は、プロバイオティクス群で8.8%、プラセボ群で15.4%と前者の方が低かったが、統計的に有意な差は認められなかった(P=0.17)。ただし、プロバイオティクス群では、COVID-19の診断を受けるまでの時間が有意に長かった(P=0.049)。
こうした結果についてWischmeyer氏は、「プロバイオティクスは免疫系を強化し、炎症に関わる体内の化学物質を減少させ、感染に対する肺の防御能を高めることが知られている」と指摘。その上で、「今回の試験で得られた結果は、われわれにとっては驚きではなかった。インフルエンザなどの呼吸器感染症に対するプロバイオティクスの強い有効性を実証した先行研究がいくつかあったからだ」と話している。
Wischmeyer氏は、「プロバイオティクスは、ワクチン接種が受けにくい低所得国や、『ワクチン疲れ』で新型コロナワクチンのブースターの接種率が低い米国の地域では特に有用な可能性がある」との見方を示す。米疾病対策センター(CDC)によると、2023年に改良版の新型コロナワクチンを接種した人は、米国の人口の20%以下であるという。
[2023年12月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら