適度な低炭水化物食が1型糖尿病患者の治療の助けに

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/02/08

 

 適度な低炭水化物食が1型糖尿病患者の血糖管理を容易にする可能性を示す研究結果が、「The Lancet Regional Health - Europe」に12月19日掲載された。論文の筆頭著者であるヨーテボリ大学(スウェーデン)のSofia Sterner Isaksson氏は、「この研究の結果は、適度な低炭水化物食によって平均血糖値が低下し、血糖値が目標範囲内に収まる時間が延長することを示している。この変化は1型糖尿病患者の臓器障害のリスク軽減につながるのではないか」と述べている。

 炭水化物を消化吸収することで生じる血糖は、膵臓のβ細胞で分泌されるインスリンの働きで全身の細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用される。1型糖尿病はβ細胞が破壊されて発症するタイプの糖尿病で、発症後には生存のためにインスリン療法が必須となり、その血糖管理は2型糖尿病に比べて一般に困難であり、高血糖や低血糖が起こりやすい。血糖管理が不十分な状態が年余にわたると深刻な臓器障害につながる。

 1型糖尿病の治療として、古くは厳格な炭水化物摂取制限が行われていた時代もあった。しかし現在は糖尿病でない人に対して推奨されるような健康的な食事が、1型糖尿病の食事療法としても推奨されることが多く、1型糖尿病の血糖管理目的で低炭水化物食を行った場合の影響を調べた研究は少ない。以上を背景にIsaksson氏らは、極端ではなく適度な低炭水化物食が、1型糖尿病患者の血糖管理状態を改善し得るかを検討した。

 この研究には、HbA1c7.5%以上の成人1型糖尿病患者54人が参加し、12週間にわたる多施設共同無作為化非盲検クロスオーバー試験として実施された。通常の食事(炭水化物の摂取エネルギー比が50%)または適度な低炭水化物食(同30%)を4週間継続し、4週間のウォッシュアウト期間を置いて、食事条件の割付けを切り替えた上で4週間継続した。主要評価項目は、連続血糖測定で把握された各試行条件の最後の14日間の平均血糖値の差とした。

 データ欠落などのない50人が解析対象となった。解析対象者のベースラインデータは、平均年齢48歳で、女性50%、HbA1c8.4%、BMI29など。

 解析の結果、平均血糖値の差は10.8mg/dL(95%信頼区間5.4~16.2)であり、低炭水化物食条件の方が有意に低値だった(P<0.001)。また、血糖値が管理目標(70~180mg/dL)の範囲内にあった時間の割合は、低炭水化物食条件の方が4.7%(同1.3~8.0/1日当たり68分)有意に大きかった(P=0.008)。また、高血糖(180mg/dL以上)の時間の割合は低炭水化物食条件の方が5.9%(2.2~9.6/1日当たり85分)有意に少なかった(P=0.003)。

 低血糖の時間の割合や、血糖値の標準偏差には有意差がなかった。また、重症低血糖やケトアシドーシスなどの重篤な有害事象は観察されなかった。

 Isaksson氏は大学発のリリースの中で、「適度な低炭水化物食は、成人1型糖尿病患者にとって良い治療選択肢となり得る。ただし、脂質と炭水化物の質に留意し、食事全体が健康的であること、そして炭水化物の摂取量が少なくなりすぎないことが重要」と解説している。

[2023年12月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら