命を脅かす慢性疾患を抱えている人に対する緩和ケアは、電話で行っても効果があるようだ。慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全(HF)、および間質性肺疾患(ILD)の患者を対象にした臨床試験で、看護師やソーシャルワーカーが電話を通して症状の管理や心理社会的ケアを行ったところ、患者の生活の質(QOL)が有意に改善したことが明らかになった。米コロラド大学医学部教授のDavid Bekelman氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に1月16日掲載された。
Bekelman氏は、「われわれは、これらの病気に対する治療では良い成果をあげているが、患者のQOL向上に対してはもっとできることがある。多くの患者は、持続的な抑うつ、不安、息切れ、睡眠障害などの症状に悩まされ、病気を抱えながら生きることに大きな困難を感じている。これらの症状は早期死亡とも関連している」と話す。
この臨床試験には、米コロラド州とワシントン州にある2つの退役軍人局の医療システムから抽出された、COPD、HF、またはILDの外来患者のうち、入院や死亡リスクが高く、QOLが低いことを報告した306人(平均年齢68.9歳、男性90.2%)が登録された。試験参加者は、177人(57.8%)がCOPD、67人(21.9%)がHF、49人(16%)がCOPDとHFの併存、13人(4.2%)がILDの診断を受けていた。
306人のうちの154人は電話による緩和ケアを受ける群(介入群)、152人は通常のケアを受ける群(通常ケア群)にランダムに割り付けられた。通常ケア群には、慢性疾患のセルフケアについて説明した資料が配布された。介入群は、症状管理に関する看護師との6回の通話と、心理社会的な側面のケアに関するソーシャルワーカーとの6回の通話による緩和ケアを受けた。介入の頻度は月に2回が基本だったが、患者のニーズに応じて通話の頻度や長さは変更された。看護師とソーシャルワーカーは、プライマリケアおよび緩和ケアの医師と定期的に会ってそれぞれの患者の状態を確認し合い、患者が抱える懸念に対する最善の対処法を決めた。また、必要に応じて循環器専門医や呼吸器専門医とも面談した。QOLの改善度は、FACT-G(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-General)で評価した。FACT-Gは0〜100点でスコア化し、高得点ほどQOLが良好なことを意味する。
試験開始から6カ月後の時点でのFACT-Gの平均スコアは、介入群では6.0点向上していたのに対し、通常ケア群では1.4点の向上であり、前者では後者に比べてQOLが有意に改善したことが明らかになった(差4.6点、95%信頼区間1.8〜7.4、P=0.001)。また、介入群のうちCOPD患者とHF患者では、通常ケア群に比べて疾患特異的QOLの改善も認められた(COPD:標準化平均差0.44、P=0.04、HF:同0.41、P=0.01)。さらに、抑うつ(同−0.50、P<0.001)と不安(同−0.51、P<0.001)の有意な改善も確認された。
こうした結果を受けてBekelman氏は、「緩和ケアは有益だ。しかし外来では、緩和ケア専門医へのアクセスが限られているか、専門医自体が存在しない場合がある。そのため、早期に緩和ケアを提供するための、柔軟で拡張可能な新たな方法が必要とされている」と話す。そして、「われわれが提示したこの革新的なチームケアモデルは、さまざまな現場に適応可能で拡張性もあり、慢性疾患とともに生きる人々のQOLを改善するのに役立つ。われわれが試したプログラムでは、たとえ短時間でも、構造化された遠隔ケアを提供することで、通話終了から数カ月後でもQOLが改善されていることが示された」と述べている。
[2024年1月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら