愛犬がテレビで何を見るのが一番好きか考えてみてほしい。自然のドキュメンタリー番組だろうか、動物の映像だろうか。米ウィスコンシン大学マディソン校獣医学部教授のFreya Mowat氏らが「Applied Animal Behavior Science」1月号に発表した研究によると、犬が最も興味を示す動画や映像は、他の動物、特に犬が登場するものであるという。
この研究は、犬の視覚をチェックするためのより良い方法の開発を目的にした研究の一部として実施された。Mowat氏は、「現在、われわれが犬の視力を評価する際に使っている方法は、人間で例えるなら、対象物が見えているかいないかを単にイエスかノーで答えさせるような、非常に低レベルのものしかない。犬の視力を評価するには、犬用の視力表(アイチャート)に相当するような、より高感度な方法が必要だ」と主張する。そして、「われわれは、動画を利用することで視覚機能の評価に必要な時間だけ犬の注意を引きつけることができると考えている。しかし、どのようなタイプのコンテンツが犬にとって最も魅力的なのかが不明だった」と研究背景を説明している。
この点を調べるためにMowat氏らは、飼い犬のテレビとの関わりに関するウェブベースの調査票を作成し、世界中の犬の飼い主に回答してもらった。調査は、家庭内のスクリーンの種類(テレビ、タブレット、パソコンのスクリーンなど)、犬の年齢や犬種などの基本情報に加え、動画や映像に対する反応や興味を示すコンテンツなどを問う41項目の質問で構成されていた。調査では、犬、交通、パートナー(飼い主)、鳥の4本のショート動画を犬に見せることもできた。得られた回答の中から、動画や映像に対する犬の興味について不明と答えたものなどを除外し、最終的に1,246件の回答を解析対象とした。
回答のほとんど(89%)は米国から寄せられたものだった。対象とされた犬の年齢中央値は4歳で、雌犬が51%、純血種の犬が54%を占めていた。全回答のうちの1,077件で飼い犬が動画や映像に興味を示すこと、残りの75件は興味を示さないことが報告されていた。動画や映像に興味を示す犬は、スクリーンに近付く(78%)、首を傾げる/耳を立てる(78%)、鳴き声を出す(76%)、鼻先でスクリーンに触れる(29%)などの反応を示すことが報告されていた。
調査結果からは、そのほかに以下のような結果が判明した。
・動画や映像に興味を示す犬の間で最も人気があるコンテンツは、動物が登場するものだった(95%の犬が反応)。
・動物が出てくる動画や映像の中でも、犬が出てくるものは、とりわけ犬の興味を引き付けた(93%の犬が反応)。
・人間の出てくる動画や映像に対する犬の関心はあまり高くなく、17カテゴリー中9位だった(37%の犬が反応)。
・年齢と視力は、犬が動画や映像に興味を示す頻度に関係するのに対し、年齢と犬種は犬が興味を示す動画や映像の内容に関係する。
・スポーティングドッグ(鳥猟犬;ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバーなど)と牧羊犬・牧畜犬(オーストラリアンシェパード、ボーダーコリーなど)は他の犬種の犬に比べて、あらゆるタイプの動画や映像に興味を示す傾向が強かった。
・スクリーン上の動きは犬の注意を強く引いた。
Mowat氏は、「これらの結果は、動画をベースに犬の加齢に伴う視覚的注意の変化を追跡する方法の開発に役立てることができるだろう」と話す。そして、「犬の視力がどのように老化していくのかを理解することは、犬とともに暮らす人間にも役立つ。例えば、視覚に有害な環境要因や生活習慣の影響は、それが人間に現れる何十年も前に、人間よりもはるかに寿命の短い犬に現れる可能性がある。その意味で、犬は人間の『センチネル種』と言えるのかもしれない」と付け加えている。
[2024年1月23日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら