「アルカリ水」として販売されている飲料を、尿路結石の予防目的で飲んだとしても、効果を得られる可能性は低いのではないかとする論文が発表された。それらの飲料に含まれているアルカリ成分は少なすぎて、尿のpHレベルに影響を与えるほどではないという。米カリフォルニア大学アーバイン校のRoshan Patel氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of Urology」に2月1日掲載された。研究グループによると、アルカリ水よりもむしろオレンジジュースの方が良い選択肢である可能性があるとのことだ。
Patel氏らは論文中に研究の背景として、「高pH水」とも呼ばれるアルカリ水への人気の高まりを指摘している。水道水のpHは7.5程度だが、アルカリ水はそれより高い。尿路結石は再発しやすい疾患であり、再発予防には尿のpHを上げることが重要で、その方法として薬物治療としてはクエン酸カリウムが処方される。しかしクエン酸カリウムの錠剤はサイズが大きく、毎日複数回飲む必要があるため、服用したがらない患者も少なくない。このような人たちの間で、アルカリ水への尿路結石再発予防効果への期待が広がっているのだという。
そこでPatel氏らは、米国で市販されている5種類のアルカリ水のpHを測定した。また、尿のpHを上昇させる可能性のある、ほかの飲料や食品についても、公表されているデータの検討を行った。
検討の結果、5種類のアルカリ水のpHは、9.69~10.15の範囲であり、アルカリ含有量は1L当たり、わずか0.1mEqだった。研究者によると、この量は体内で代謝産物として生成される酸が1日に約40~100mEqであることに比べると、「取るに足りない」レベルだという。また、ある製品には、少量のクエン酸塩が含まれていたが、製品ラベルにはそのことが記載されていなかった。Patel氏は、「アルカリ水のpHは水道水よりも高いが、アルカリ含有量は無視できる程度のものだ。このことは、腎臓やその他の部位にできる尿路結石の発生に影響を与えるほど、尿のpHを上げることができないことを示唆している」と、大学発のリリースの中で述べている。
対照的に、尿のpHを上昇させる可能性のある市販製品が見つかった。例えば、オレンジジュースの中にはアルカリ含有量が1L当たり最大15mEqに達する製品があり、費用対効果の高い予防手段となる可能性が認められた。もう一つの低コストで効果的な選択肢は、料理に「膨らし粉」として用いられる重曹(重炭酸ナトリウム)が挙げられる。ただし、重曹についてはナトリウムが含まれているため、研究者らは「健康上の懸念がある」と指摘している。
これらの結果を基にPatel氏は、「われわれの報告は、アルカリ水ではない一部の市販飲料や食品が尿路結石の再発予防に役立つ可能性を示している」と述べている。ただし、「得られたデータは研究室内での解析結果であり、実際に尿のpHを上昇させるための最良の方法は、臨床試験により確認する必要がある」とのことだ。
[2024年1月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら