特殊な脳スキャンによって、精神病患者が治療に反応しない(治療抵抗性)統合失調症に移行するかどうかを正確に予測できる可能性があるとする研究結果を、アムステルダム大学(オランダ)のMarieke van der Pluijm氏らが、「The American Journal of Psychiatry」に3月13日報告した。
この脳スキャンは、中枢神経系のニューロメラニンと呼ばれる色素を測定するもので、ニューロメラニン感受性(neuromelanin-sensitive)MRI(NM-MRI)と呼ばれる。この色素を視覚的に示すことで、ドーパミンの機能レベルを知ることができる。ドーパミンは脳の報酬系から分泌される神経伝達物質の一つで、やる気や幸福感、運動調節に関わっている。そのため、ドーパミンの分泌過多は精神病に付随する攻撃性や衝動制御の低下をもたらす可能性がある。
研究グループは、「治療抵抗性の統合失調症患者を早期に見つけ出し、そうした患者に対する有効性が証明されている唯一の抗精神病薬であるクロザピンによる治療のタイムリーな開始を促すためのマーカーが喫緊に必要とされている」と述べている。治療に反応しない統合失調症患者では、治療してもドーパミン機能が増強しない。研究グループは、「このことは、NM-MRIによるニューロメラニンの評価(ドーパミン機能の指標)が、治療抵抗性の患者を早期に発見するためのマーカーとなる可能性のあることを示唆している」と述べている。
今回の研究では、初回精神病(統合失調症)エピソードを有する患者79人と、これらの患者とマッチさせた健康な対照20人にNM-MRIスキャンを実施した。また、その6カ月後の追跡調査時に治療応答性の評価を行った。抗精神病薬を2回使用後も、妄想、幻覚、異常な姿勢、異常な思考の五つの領域のいずれかに中等度または高度の症状が認められた場合、一種類の抗精神病薬で効果が認められなかったか重篤な副作用が生じた場合、あるいは追跡調査中にクロザピンに変更された場合は、「非応答」と見なされた。
その結果、ベースラインのNM-MRIでは、15人の非応答者で、ドーパミンニューロンが豊富な脳領域(黒質)の信号が有意に低いことが明らかになった。また、ニューロメラニンの評価に基づくことで、どの患者が治療に反応するかを最大68%の精度で予測できると推定された。追跡調査を受けた治療応答者28人と非応答者9人では、6カ月間の間にNM-MRIの信号強度に変化は認められなかった。
研究グループは、「本研究により、NM-MRIが統合失調症患者における治療抵抗性の非侵襲的マーカーとして早期から有用であることが示唆された」と結論付けている。その上で、「最終的には、適切な予測モデルによって統合失調症における治療抵抗性を早期に同定することが可能となり、それによって効果的な治療が遅れる患者の数を大幅に減らし、転帰を改善することができるようになるだろう」との見通しを示している。
[2024年3月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら