従来の放射線療法と手術ではなく、MRIと超音波を用いた侵襲性の極めて低い新たな治療法(タルサ治療)が、前立腺がんを効果的に治療することを示した研究結果が報告された。この治療を受けた患者の76%は、1年後の追跡生検でがん細胞が見つからなかったという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイビッド・ゲフィン医学部放射線科、泌尿器科、外科分野教授のSteven Raman氏らによるこの研究結果は、インターベンショナルラジオロジー学会(SIR 2024、3月23〜28日、米ソルトレークシティ)で発表された。
タルサ治療(transurethral ultrasound ablation;TULSA)は、尿道から細いカテーテルのような器具を挿入して、MRIガイド下で病変部の位置を正確に見極めながら超音波による加熱治療を行うもの。MRIで前立腺内部の温度を確認しながら、前立腺を取り囲む感覚神経への影響を抑える一方で治療が必要な組織にはがんが死滅する55度以上にまで超音波の出力を高めることができる。
この研究では、前立腺がんの男性115人が5カ国、13カ所の病院で募集され、タルサ治療が行われた。タルサ治療は、外来施設で全身麻酔または脊椎麻酔を用いて実施可能で、所要時間は2〜3時間だという。
その結果、タルサ治療によりがん細胞は減少するか消失し、前立腺が縮小し、前立腺特異抗原(PSA)値が低下したことが示された。治療から1年後の追跡調査時に、76%の対象者でがんが検出されず、1年以内に前立腺のサイズは92%縮小し、5年後にはPSA値が基準値レベルにまで低下した(6.3ng/mL→0.63ng/mL)。また、この治療法は前立腺がんの他の治療法に比べて副作用が少ないことも示された。治療から5年後に、男性の92%が膀胱の働きをコントロールでき、87%が良好な勃起機能を有していた。失禁と勃起不全は前立腺がんの手術後に生じる一般的な副作用である。
Raman氏は、「タルサ治療は、がん細胞を死滅させる能力を最大化する一方で前立腺への副次的なダメージを最小限に抑えながら、前立腺がん治療において最も重要な三要素である、局所的ながんの完全制御、尿失禁の回避、性機能の維持を達成することが可能だ」と述べ、この治療法が前立腺全体に対する治療における革命であると主張している。同氏は、「前立腺がんは男性に最も多いがんであり、生涯に8人に1人が罹患する。さらなる研究が必要ではあるが、今後、有効性と安全性が確認されれば、この治療法が何千人もの前立腺がん患者に対する標準治療を変える可能性がある」と話している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[2024年3月20日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら