近くにあるAEDが心停止者に使われることはまれ

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/04/29

 

 この数年で、心停止者の命を救うための自動体外式除細動器(AED)を公共施設に設置する動きが大きく広がっているが、残念ながら、実際にAEDが使用される機会は少ないようだ。米ミズーリ大学カンザスシティ校のMirza Khan氏らによる研究で、病院の外の環境で起こった心停止(院外心停止)約1,800件のうち、AEDが使用されたのは13件のみであったことが示された。この研究結果は、米国心臓病学会(ACC 24、4月6〜8日、米アトランタ)で発表予定。

 院外心停止症例の多くで近くにAEDが設置されていたが、バイスタンダー(心停止者の近くに居合わせた人)がそれに気付かなかった可能性がある。Khan氏は、「公共の場でのAEDの普及は、人々が適切なタイミングと方法でそれらを使用できるようにするためには重要だ。ただし、使用可能なAEDが近くにあることを人々が知る必要がある。適切な場所にAEDを設置するだけでは不十分なのだ」と指摘する。

 米疾病対策センター(CDC)によると、家庭や公共の場では毎年35万6,000件以上の心停止が発生しているが、その生存率は約10%に過ぎない。AEDは胸部に装着する小型の高性能装置で、心停止者の心臓のリズムを素早く分析し、必要に応じて救命の可能性のある電気ショックを与える。AEDは、訓練を受けていない人でも簡単に使用できるように設計されており、多くの州で空港、ショッピングモール、学校、スポーツジムなどの公共の場に設置することが法律で義務付けられている。

 今回の研究は、AEDが実際にどの程度活用されているのかを調べたもの。Khan氏らは、米国の登録データを用いて2019年から2022年の間にカンザスシティの家庭内または公共の場で発生した1,799件の心停止症例のデータを分析した。また、カンザスシティのAEDの設置場所を示した地図のデータベースに基づき、最寄りのAEDまで歩いた場合にかかる時間を算出した。

 心停止症例の大部分(85%)は家庭内で発生しており、そのうちの42%でバイスタンダーによる心肺蘇生法(CPR)が施されていた。ただ、これらの症例の4分の1近くでは、患者の自宅から徒歩4分以内にAEDが設置されていたが、AEDが使用されたケースはなかった。

 一方、公共の場で発生した心停止症例では、約42%でバイスタンダーがCPRを施していたが、AEDが使用されたのは約7%だった。また、公共の場で発生した症例の半数近くでは、徒歩4分以内の場所にAEDが設置されていた。バイスタンダーがCPRを行い、かつ心停止が起こった場所から徒歩4分以内の場所にAEDが設置されているという「最善のシナリオ」のケースでも、AEDが使われたのは、わずか4例中1例程度だったという。

 幸いなことに、多くの地方自治体がAEDにアクセスできる場所について市民の認知度を高める取り組みを進めている。Khan氏は、「各地の地方自治体や組織の熱意を目の当たりにして心強く感じてきた。彼らは、われわれが期待するAEDの設置数と実際の利用率との間のギャップを縮めるための取り組みを次の段階に進めるため、今回の研究を役立てることに極めて意欲的だ」と言う。

 ACCによると、人々が心停止の兆候について知識を得て理解することは極めて重要だ。具体的な兆候としては、突然倒れて意識を失う、叫んだり揺さぶったりしても反応しない、息を切らしている、あるいは呼吸していない、脈が触知できないなどが挙げられる。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

[2024年3月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら