GLP-1受容体作動薬のセマグルチドを使い始めて数週間で減量に成功した人を見て、同薬による治療を開始したあなた。ところが体重計の針は期待したほど下がらない。なぜ? 米国消化器病週間(DDW2024、5月18~21日、ワシントン)で発表された新たな研究によると、その違いには遺伝子が関与しているようだ。
過去にも、セマグルチドによって体重が20%以上減る人がいる一方で、約7人に1人は1年以上使用しても5%以上は減らないという研究結果が報告されており、セマグルチドの減量効果には個人差があることが知られている。その個人差を、遺伝子検査によって事前に知ることができるようになるかもしれない。
この検査は、米メイヨー・クリニックの研究者らによって開発され、昨年その研究者らが設立したPhenomix Sciences社が、「MyPhenome」という名称でライセンスを取得した。CNNの報道によると、価格は350ドルで医家向けに提供される。
主任研究者のMaria Daniela Hurtado Andrade氏は、同社発のリリースの中で、「われわれのデータは、肥満者は個々に異なる遺伝的・生物学的背景を持っていて、肥満の改善には個別化された治療が重要である可能性を示している」と述べている。また、研究グループの一員である同クリニックのAndres Acosta氏は、「この遺伝子検査によって、体重を5%以上減らせられるか否かを95%の精度で予測可能だ」と、CNNの取材に対して語っている。同氏は、「セマグルチドの使用前に治療効果を知ることができれば、時間とコストを節約できる可能性がある。同薬は安価とは言えず、必ずしも保険でカバーされるとは限らないため、自己負担額が高額になる場合もある」とも述べている。
開発された新たな検査は、GLP-1のシグナル伝達経路に関連する遺伝子の変異を調べて、セマグルチドによる空腹感への影響を予測する。この検査の結果が陽性の人は、セマグルチドにシグナルが反応するのに対して、陰性の人は反応が弱く、空腹感が抑制されにくいという。
同クリニックで減量治療を受けた84人の血液または唾液検体を用いた小規模な研究から、この検査が陽性だった人はセマグルチド使用開始1年後に、平均19.5%の減量を達成していたことが分かった。これは、陰性だった人の減量幅である10%のほぼ2倍に相当する。
なお、重要なこととして、この新しい研究の結果は査読システムのある医学誌に未発表であるため、予備的なものと見なす必要がある。Acosta氏は、「薬剤と同じように、有用性を検討するためのゴールドスタンダードである、プラセボ対照無作為化二重盲検試験で検証する必要がある。ただ、われわれが既に行った研究も、減量治療が行われた時点では陽性か陰性か分かっていなかったため、実質的に盲検化はなされていた」としている。
[2024年5月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら