終末期にさしかかった患者を救急外来(ED)からホスピスに移行させるプログラムを推進している米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院において、ED受診から96時間以内にホスピスへ移された患者の割合が、プログラム導入前の22.6%から導入後には54.1%に上昇したことが報告された。このようなプログラムが、終末期間近にEDを受診した患者に対するホスピスケアの遅れや見逃しの回避に役立つ可能性を示唆する結果だ。同病院のEDの医師であるChristopher Baugh氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月8日掲載された。
ホスピスケアでは、病気を治そうとする試みは中止され、患者への安全で快適かつ尊厳のあるケアの提供と家族のサポートに重点が移される。しかし、研究グループによると、病気や治療が複雑な患者はEDに運ばれることが多く、そこで死亡するか入院後に死亡するケースが少なくないという。
Baugh氏は、「終末期間近の患者がEDを受診した場合、まずは患者を入院させ、終末期のケアや目標について話し合ってからホスピスへ移行させるのが一般的な流れだ。しかし、ホスピスに移行させるまでには長い時間がかかるため、移行前に患者の余命が尽きてしまうこともある」と話す。
ブリガム・アンド・ウイメンズ病院が導入した新規のホスピス移行プログラムは、医師がホスピスケアの対象となる患者を迅速に特定し、より早くホスピスに移行させるために考案されたもので、人工知能(AI)のアルゴリズムを活用している。AIは、電子健康記録(EHR)を分析して、ホスピスへ移すべき候補者を特定する。移行候補者は、入院せずに外来で観察状態に置かれ、ホスピスへ移行するかどうかの最終的な決定は、緩和ケアチームやがん専門医、神経外科専門医などの病院スタッフの指導を受けながら、患者とその家族または介護者が下す。
今回の研究では、このプログラム導入前の2018年9月1日から2020年1月31日までを対照期間、導入後の2021年8月1日から2022年12月31日までを介入期間として、入院を経ずにホスピスへ移された患者、および/または、ED受診から96時間以内にホスピスへ移された患者の割合が比較された。ED受診から96時間以内のホスピス移行が適格と判断された患者は、対照期間で270人(年齢中央値74.0歳、女性49.3%)、介入期間で388人(年齢中央値73.0歳、女性53.6%)であった。このうち、実際に96時間以内にホスピスへ移された患者は、前者で22.6%であったのに対し、後者では54.1%に達した。
論文の上席著者である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のMallika Mendu氏は、「われわれが考案した、多分野連携プログラムにより提供されるケアと、そのケアが患者や家族に与える影響を目の当たりにして、信じられないほどの感動を覚えた。このプログラムは、患者とその家族の人生の重要な時期に有意義なサポートを提供し、遺された人に永続的な影響を与え得る。重要なのは、このプログラムによって、患者がEDを受診した早期の段階でホスピスに移行させることができることだ」と話している。
ただし研究グループは、「このプログラムだけでは、患者の終末期の目標とケアを一致させ、尊厳ある死を支援するという課題に完全には対処できない」と強調する。その上で、本研究において、患者の終末期ケアに関する目標を成文化した「生命維持治療に関する医師の指示書(MOLST)」と呼ばれる法的文書の存在が、介入期間の患者と対照期間の患者の双方において、ホスピスへの速やかな移行と関連していたことに言及している。
[2024年7月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら