就寝前の運動が、必ずしも睡眠を妨げるわけではないとする研究結果が報告された。短時間のレジスタンス運動で睡眠時間が長くなり、睡眠中の目覚め(中途覚醒)を増やすこともないという。オタゴ大学(ニュージーランド)のJennifer Gale氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に7月16日掲載された。
従来、激しい運動は体温や心拍数を上昇させて睡眠を妨げる可能性があるため、就寝時間が近づいてきたら運動を控えた方が良いと言われることが多かった。しかし本研究の結果、短時間のレジスタンス運動を行うことで、ソファでゆっくりするよりも睡眠が改善される可能性のあることが分かった。
短時間のレジスタンス運動とは、立った状態で片足の膝を上げたり、つま先立ちをしたり、椅子を使ってスクワットをしたり、股関節を延ばしたりといったことで、これらをそれぞれ3分間、就寝前の4時間の間に30分間隔で行うと、睡眠時間がほぼ30分長くなるという。論文の筆頭著者であるGale氏は、「睡眠に関するこれまでの推奨事項とは反対に、夜間の運動は睡眠の質を損なわないことを示すエビデンスが増えてきているが、われわれの研究結果もそれを支持する新たなエビデンスである」と述べている。
この研究では、18~40歳で日中に通常5時間以上、夕方以降に2時間以上を座位で過ごすという生活を送っている28人に対して、二つの異なる条件で睡眠の時間や質を比較した。一つ目の条件では就寝前の4時間、ソファに座って過ごしてもらい、二つ目の条件では前述のような3分間の簡単なレジスタンス運動を30分間隔で行ってもらった。これら二つの試験は、6日以上の間をおいて実施された。
その結果、レジスタンス運動を行う条件の方が、睡眠時間が平均28分長くなっていた。また、中途覚醒の回数や睡眠効率(就床時間に占める睡眠時間の割合)は、条件間で差がなかった。著者らは、「長時間の座位行動中に、周期的に短時間の身体活動を差し挟むことは、複数のメカニズムを通じて心臓代謝関連の健康を改善する可能性のある有望な方法である」と、ジャーナル発のニュースリリースで述べている。また、このような短時間のレジスタンス運動は、代謝を適度に高めて血糖値を下げることで、睡眠を改善する可能性があるとの推測も付け加えている。
著者らによると、「成人は座位で過ごす時間が長くなりやすく、かつ、1日の摂取エネルギー量のほぼ半分を夕方に摂取する。糖尿病でない人の場合、この時間帯にインスリン感受性が低下する傾向があることも、これらの生活パターンの負の影響を強めてしまう」という。一方で著者らは、本研究に用いられた筋力トレーニングは「器具が不要で簡単に行え、テレビを見ながらでも実践可能であり、多くの人々の就寝前の習慣として簡単に取り入れられるのではないか」と、この方法の長所を挙げている。
[2024年7月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら