運動を午後の時間帯に行っている2型糖尿病患者は血糖コントロールがより良好になる可能性を示す、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJingyi Qian氏らの研究結果が、「Diabetes Care」に5月25日掲載された。ただし研究者らは、この結果のみでは午後の運動を推奨することはできないと述べている。
この研究は、運動を行う時間帯を変えるという介入によって、血糖管理状態が変化するか否かを検証可能なデザインでは行われていない。それでも、午後に運動することで血糖コントロールがより良好になる機序についてQian氏は、「運動による血糖管理状態への影響は、絶食状態で行うよりも食後に行った方が大きい可能性があり、午後に運動をしている人の多くが食後に運動をしているのではないか。それに対して朝に運動をしている人は、運動をしてから朝食を食べることが多いと考えられる」との推論を述べている。とはいえ、「午後に運動をする時間を取れないからといって運動をすべきでないという意味ではない」とし、「時間帯や場所にとらわれず、運動をできるタイミングですべきだ」と同氏は推奨する。
Qian氏らの研究の解析対象は、肥満のある成人2型糖尿病患者2,416人(平均年齢59歳、女性57%)。研究開始の1年目と4年目にそれぞれ7日間、加速度計を腰に身に着けて生活してもらい、中~高強度の身体活動(MVPA)が行われていた時間帯と、血糖コントロール状態の変化との関連性を検討した。
身体活動量の多寡の影響を調整後、午後(14~17時)にMVPAを行っていた群では研究開始1年目のHbA1cが、他の時間帯にMVPAを行っていた人に比べて30~50%ほど大きく低下していた。この群間差は1年目が最も顕著だったが、4年後にも差が認められた。また、血糖降下薬の使用を中止できた割合も、午後にMVPAを行っていた群が最も高かった。なお、この研究では、どのようなMVPAが行われていたかは調査されなかった。Qian氏は、「運動の時間帯の違いに焦点を当てる研究はまだ新しい領域であり、今後、多くの研究が必要とされる」としている。
本研究には関与していない米ユタ大学のTanya Halliday氏は、「運動を行うタイミングそのものが血糖コントロールに影響を与えたのか、それとも午後に運動を行えるという生活環境にある人にはそのほかの人とは異なる何らかの特徴があって、そのことがHbA1cの差を生んだのか、その点が不明である。2型糖尿病患者の運動療法について、最適な時間帯を推奨するのは時期尚早だ」としている。同氏はまた、「例えば、運動の時間帯が異なることで、血糖コントロールに影響を及ぼし得る食事や睡眠のパターンが変化する可能性がある。この観察研究の報告が、追試によって再現可能かを確認することが重要だろう」と付け加えている。
[2023年5月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら