重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心筋梗塞や脳卒中、全死亡などの主要心血管イベント(MACE)リスクを高め、その程度はCOVID-19に罹患していないが心疾患の既往歴がある人のリスクとほぼ同程度であることが、米クリーブランドクリニック・ラーナー研究所心血管代謝学部長のStanley Hazen氏らによる新たな研究から明らかになった。この研究ではまた、重症度にかかわらず、COVID-19罹患は、その後3年間のMACEリスクを2倍に高めることも示されたという。この研究結果は、「Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology」に10月9日掲載された。
Hazen氏は、「この研究結果から、COVID-19は上気道感染症である一方で、さまざまな健康リスクを伴う疾患であり、心血管疾患の予防に関する計画や目標を策定する際には、COVID-19の既往歴を考慮すべきことを強く示したものだ」と述べている。
COVID-19パンデミックの初期には、新型コロナウイルスへの感染が血栓や心臓の問題のリスクを高めることが示されていた。しかし、このような高リスク状態がいつまで続くのか、どのような要因が影響するのかについては十分に解明されていないとHazen氏らは言う。
そこでHazen氏らは、2020年の2月1日から12月31日までの間に英国でCOVID-19の診断を受けた患者1万5人のデータを分析し、心血管の健康状態をCOVID-19に罹患していない21万7,730人と比較した。
その結果、COVID-19への罹患者では、重症度とは無関係に、1,003日の追跡期間にわたってMACEリスクが2倍以上に上昇することが明らかになった(ハザード比2.09、95%信頼区間1.94〜2.25、P<0.0005)。このようなリスク上昇は、COVID-19罹患により入院を要した人で顕著だった(同3.85、3.51〜4.24、P<0.0005)。また、心血管疾患の既往歴がないCOVID-19罹患者でのMACEリスクは、心血管疾患の既往はあるがCOVID-19罹患歴がない人よりも20%以上高かったことから(同1.21、1.08〜1.37、P<0.005)、COVID-19による入院が冠動脈疾患(CAD)と同等のリスク(CAD risk equivalent)をもたらすことが確認された。
さらにHazen氏らは、そのリスクの程度が血液型によって異なることも突き止めた。血液型がA型、B型、AB型の人では、O型の人と比べてCOVID-19による入院を経験した後の血栓イベント(心筋梗塞と脳卒中)のリスクが有意に高いことが示されたのだ。このことは、新型コロナウイルスへの感染後の心疾患リスクには、その人の遺伝的特徴が影響している可能性を示唆していると、Hazen氏らは指摘している。
論文の上席著者で、米南カリフォルニア大学ケック医学校ポピュレーションヘルス・公衆衛生科学および生化学・分子医学教授のHooman Allayee氏は、「われわれは、この結果を説明できる要因が他にあるかどうかを確認しようとしているところだが、実際に、特定の血液型では、生物学的な何らかのメカニズムが作用しているようだ」と話している。また同氏は、「われわれの観察の結果と、世界の人口の60%はO型以外の血液型である事実を踏まえると、われわれの研究は、個々の患者の遺伝的特徴を考慮した、より積極的な心血管リスク低減策を検討すべきかどうかという重要な問題を提起するものだ」と同大学のニュースリリースの中で付け加えている。
Allayee氏は、医師は新型コロナウイルスへの感染を全般的な心臓のリスクの一部としてとらえる必要があると主張する。同氏は、「現時点で疑問として残るのは、本研究結果と今後の研究結果により、心疾患の既往がない人に対する心臓の予防医療に関するガイドラインが、COVID-19の心臓への影響を考慮したものに変更されるのかということだ」と話している。
[2024年10月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら